【 2007 年度 授業概要】
科   目 無機化学II ( Inorganic Chemistry II )
担当教員 松本 久司,松井 哲治
対象学年等 応用化学科・3年・通年・必修・2単位 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
授業の概要
と方針
典型元素の各論(4〜17族元素)を学ぶとともに,錯体化学(錯体の種類とその構造,錯体の結合理論)および放射線化学(同位体,原子核とその利用)について学習する。なお,講義は前後期別に配布しておいた講義資料への記入を中心に進める。



1 12族および14〜17族元素(典型元素)の化合物の名称や製法,性質を理解し,種々の物質との反応を化学式で示せる。また,それに関連する種々の計算問題が解ける。
2 3〜10族元素(遷移元素)の化合物の名称や製法,性質を理解し,種々の物質との反応を化学式で示せる。
3 錯体の名称とその構造を理解し,説明することができる。磁化率との関係や錯体の色を理解し,説明できる。
4 放射性壊変や同位体について基本的事項を理解し,説明できる。年代測定の計算ができる。
5 原子核の結合エネルギーが計算でき,原子炉の構造と制御法を理解し説明できる。
6  
7  
8  
9  
10  












1 12族および14〜17族元素(典型元素)の主な化合物の名称や製法および性質を説明し,種々の物質との反応を化学式で示せるかを,前期中間試験,前期定期試験,小テストおよび課題で評価する。
2 3〜10族元素(遷移元素)の化合物の名称や製法および性質を説明し,種々の物質との反応を化学式で示せるかを,後期中間試験や課題で評価する。
3 錯体の名称とその構造が理解できているか,錯体の磁化率やその色との関係を理解し,説明できるかを後期定期試験で評価する。
4 放射性壊変,同位体や原子力の利用について基本的事項を理解し説明できるか,核化学に関する基礎的な計算問題が解けるかを後期定期試験で評価する。
5 放射性壊変,同位体や原子力の利用について基本的事項を理解し説明できるか,核化学に関する基礎的な計算問題が解けるかを後期定期試験で評価する。
6  
7  
8  
9  
10  




前期成績は試験80%,課題10%,小テスト10%として評価する。後期成績は試験80%,課題20%として評価する。なお,試験成績は中間試験と定期試験の平均点とする。前期成績と後期成績を平均して総合評価する。100点満点で55点以上を合格とする。
テキスト 「演習形式で学ぶ,やさしい無機化学」 : 前野昌弘著 (裳華房出版)
「簡明化学命名法」 岡田功編(オーム社)
プリント
参考書 「無機化学」 : 著 (裳華房出版)
「基礎化学選書ー元素と周期律」 : 著 (裳華房出版)
「化学教科書シリ−ズー無機化学演習」 : 著(丸善出版)
関連科目 無機化学I(C2),分析化学I(C2),物理化学I(C3),分析化学II(C3)
履修上の
注意事項
上記の関連科目を十分学習し,理解しておくことが望ましい。

【授業計画( 無機化学II )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 亜鉛族元素(Zn,Cd,Hg)(1)
亜鉛族に属する元素とそれらの持つ電子構造の特徴を説明する。この族の元素の化学的性質の共通点と相違点について説明する。単体の製法とそのときの原料を解説する。単体の主な性質を説明する。また,主な化合物と反応を説明する。そして,各元素の生体への作用を解説する。
2 亜鉛族元素(Zn,Cd,Hg)(2)
第1週に同じ。
3 亜鉛族元素(Zn,Cd,Hg)(3)
第2週に同じ。
4 炭素族元素(C,Si,Ge,Sn,Pb)(1)
炭素族元素は原子番号の増加とともに非金属から金属へと明確な変化があることを解説する。炭素族元素の電子構造の特徴と化学結合(3種類の混成軌道)の関係を具体例をあげて解説する。炭素の同素体とその性質の違いを化学結合の上から解説する。不活性電子対効果の説明をする。
5 炭素族元素(C,Si,Ge,Sn,Pb)(2)
炭素の主な化合物(一酸化炭素と二酸化炭素)の製法と性質・用途を説明する。ケイ素の化合物であるガラスの種類や性質などを説明する。炭素以外の元素の単体の化学的性質について解説する。
6 炭素族元素(C,Si,Ge,Sn,Pb)(3)
第5週に同じ。演習をする。
7 窒素族元素(N,P,As,Sb,Bi)(1)
第15族である窒素族元素は窒素,リンが典型的非金属あることを解説する。また,ヒ素,アンチモンはメタロイドに属し,ビスマスは典型的な金属であること解説する。窒素の特徴は,アンモニアや硝酸,の合成方法で解説する。主な化合物は酸化物をとりあげる。ビスマスは不活性電子対効果の説明に用いる。
8 中間試験
第1週から第7週の内容で中間試験を実施する。
9 中間試験の解答,窒素族元素(N,P,As,Sb,Bi)(2)
中間試験を返却し解答する。リンに関しては,オルトリン酸の製造法,他の著名なオキソ酸の構造と性質を説明する。関連して,オキソ酸の酸としての強度の概念を説明し,簡単な演習を行なう。
10 窒素族元素(N,P,As,Sb,Bi)(3)
第9週と同じ。ヒ素,アンチモン,ビスマスについては,主な反応をとりあげて,特徴を解説する。
11 酸素族元素(O,S,Se,Te,Po)(1)
第16族である酸素族元素の内で,酸素は地球上で最も豊富に存在する。そのことを利用して,クラーク数を説明する。またそれぞれの元素の天然での所在を解説する。この族の身近な化合物に見られる酸化数を説明する。酸素やオゾンの説明時に水の電気分解の基本的なことを解説する。
12 酸素族元素(O,S,Se,Te,Po)(2)
酸素の主な化合物としては,過酸化水素,硫酸などの製法や性質を説明する。硫黄に関しては,酸化物,硫化物,などを中心に説明する。
13 酸素族元素(O,S,Se,Te,Po)(3)
基本的には,第12週に同じであるが,イオウのオキソ酸の構造や性質を説明する。同時に,酸素族全般の簡単な演習を行なう。
14 ハロゲン元素(F,Cl,Br,I,At)(1)
第17族であるハロゲン元素は,化学的に非常に活性(酸化性)であること。物理的には分子間力の影響を受けて,原子番号の増加に伴い規則的に変化すること。以上のことを演習を通じて解説する。
15 ハロゲン族元素(F,Cl,Br,I,At)(2)
この族の主な化合物として,水素化物をとりあげて,製法や性質を説明する。また,単体の製法も解説する。ハロゲン元素を通して簡単な演習を行なう。
16 スカンジウム族元素(Sc,Y,La) ,チタン族元素(Ti,Zr,Hf)
第3族内の名称(スカンジウム族・ランタノイド・ランタニド・希土類元素)の違いを理解し,族の通性と各元素の反応や性質などについて学習する。チタン族の通性を理解し,特にチタンの反応や性質,化合物などについて学習する。
17 バナジウム族元素(V,Nb,Ta)
バナジウム族の通性を理解し,特にバナジウムの反応や性質(縮合した化合物であるイソポリ酸を作りやすい)などについて学習する。
18 クロム族元素(Cr,Mo,W)(1)
クロム族の通性を理解し,クロム族各元素の反応や性質,化合物などについて学習する。
19 クロム族元素(Cr,Mo,W)(2) ,マンガン族元素(Mn,Tc,Re)
クロム族各元素の反応(特に,酸化還元反応)や性質などについて学習する。マンガン族の通性を理解し,特にマンガンの反応や性質,化合物などについて学習する。
20 鉄族元素(Fe,Co,Ni)(1)
鉄族の通性を理解し,製鉄・製鋼等について学ぶ。また,磁性について学習する。
21 鉄族元素(Fe,Co,Ni)(2)
コバルトとニッケルの反応や性質,化合物などについて学習する。
22 白金族元素(Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt),内遷移元素(ランタノイド・アクチノイド)
白金族元素の反応や性質,化合物などについて学習する。内遷移元素の特徴と主な元素の性質や用途について学習する。
23 中間試験
周期表の各族の基本的な内容の理解と化学計算の実力を試す。
24 中間試験の解答,錯体の構造(1)
中間試験を返却し解答を行なう。金属錯体の立体構造を混成軌道を用いて説明する。特に8面体構造を有する高スピン型錯体(外軌道型)と低スピン型錯体(内軌道型)については詳述する。
25 錯体の構造(2)・錯体の磁性
その他の錯体の立体構造についても混成軌道を用いて説明すると共に,錯体の磁性と電子のスピンについても説明する。
26 錯体の構造と磁性
錯体の磁気モーメントを計算し,実測値からスピン数を推定する。そのスピン数から実際の錯体の構造を説明する。
27 錯体の色とd電子遷移
d軌道間の電子遷移のエネルギー差から個々の錯体の持つ色の違いを説明する(結晶場理論)。
28 放射性壊変と壊変系列
放射線の種類やその性質について説明し,放射性壊変による原子番号と質量数変化を知る。放射性壊変系列について学ぶ。
29 放射性速度と年代測定
放射性壊変速度に関する基本的な事項(壊変定数,半減期)を説明する。また,この関係を用いた年代測定法を学習する。
30 核の結合エネルギー・放射線化学に関する演習,核の平和利用
質量欠損から原子核の結合エネルギーを求める。また,放射線化学に関する演習問題を解く。原子炉における制御方法について学習する。


中間試験および定期試験を実施する。