【 2007 年度 授業概要】
科   目 応用物理I ( Applied Physics I )
担当教員 渡辺 昭敬,九鬼 導隆
対象学年等 応用化学科・3年・通年・必修・2単位 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
授業の概要
と方針
理学・工学の基礎となる物理学より,物質の状態や化学変化に関わる熱力学と,物理学の基本となる力学について講義する。熱力学では,物理量と単位,気体の状態方程式,熱力学(第一,第二,第三法則)とその化学への応用(化学熱力学)について,力学では質点系と剛体の基本的な系について,一通りのNewton力学を教授する。



1 物理量について理解し,単位変換が容易に行える。
2 気体の状態方程式および,分子運動論について理解する。
3 熱力学の各種法則を理解し,反応におけるエンタルピーおよびエントロピー変化を理解する。
4 運動方程式やエネルギー保存則等の基本的な概念を理解して,1質点系の基本的な力学問題を解くことができ,また,エネルギー等の物理量や質点の軌道等を計算できる。
5 運動量保存則,重心系の運動と相対運動等の基本的な概念を理解し,粒子の衝突等の基本的な2体問題を解くことができ,また,運動量等の物理量や衝突後の粒子の軌道等が計算できる。
6 慣性モーメントや角運動量保存則等の基本的な概念を理解して,中心力場における質点の運動や剛体の運動について,基本的な力学問題を解くことができ,また,角運動量やエネルギー等の物理量が計算できる。
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1 圧力やエネルギーおよび気体定数などの単位変換が自在にできるかどうか中間試験で評価する。
2 気体の状態方程式と分子運動論を理解しているかを中間試験および定期試験で評価する。
3 エンタルピー,エントロピー,Gibbsエネルギーについて理解しているかを定期試験で評価する。
4 主に中間試験で,基本的な1質点系の力学問題が解けるかどうか,また,質点の軌道やエネルギー等が計算できるかどうかで評価する。
5 主に定期試験で,基本的な2体問題が解けるかどうか,また,質点の軌道や運動量等が計算できるかどうかで評価する。
6 主に定期試験で中心力場における基本的な2体問題や,基本的な剛体の運動の問題が解けるかどうか,また,慣性モーメントや角運動量等が計算できるかどうかで評価する。
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成績は,試験100% として評価する。「評価方法と基準」にある,1〜2を中間試験で,3を定期試験で,4を中間試験で,5〜6を定期試験で評価し,それぞれの中間・定期試験を25%として4回の試験の合計が100%となるように評価する。100点満点で55点以上を合格とする
テキスト 「物理化学要論」P. W. Atkins著・千原秀昭・稲葉 章 訳 (東京化学同人)
「裳華房テキストシリーズ-物理学 力学」川村 清著・阿部 龍蔵・川村 清監修(裳華房)
参考書 「アトキンス 物理化学 (上・下)」 P. W. Atkins著・千原秀昭・稲葉 章 訳 (東京化学同人)
「物理の考え方1 力学の考え方」砂川 重信(岩波書店)
「物理入門コース1 力学」戸田 盛和(岩波書店)
「力学(I) - 質点・剛体の力学 -」原島 鮮(裳華房)
関連科目 一般科目の数学・物理学・化学
履修上の
注意事項
物理学は数学での記述の上に成り立っている。よって,数学を十分理解していることが望ましい。また,基本的な物理学の知識として,一般科目の物理学についても,十分理解していることが望ましい。さらに,化学への応用も視野に入れているので,一般科目の化学についても,十分に理解していることが望ましい。

【授業計画( 応用物理I )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 物理量とSI単位 数値計算方法
物理化学の学習意義について説明する。また,各物理量の定義について学び,SI単位系とそれ以外の系との変換や実際の数値を伴った単位換算について学習する。
2 気体の状態(温度,圧力,体積,エネルギー)
ボイル,シャルルの法則および,アボガドロの原理から完全気体の状態方程式が得られることを学ぶ。また,気体分子運動論からも同様の式が得られることを学習する。
3 気体の状態方程式を解く(完全気体)
完全気体の性質について理解し,状態方程式に関する演習問題を解く。
4 気体の状態方程式を解く(実在気体)
完全気体と実在気体の違いについて理解する。また,ビリアル方程式とVan der Waals式について理解する。
5 演習問題
気体の運動と状態方程式に関わる問題を解く。必要に応じて臨時試験を実施する場合もある。
6 熱力学第一法則(内部エネルギー)
熱力学の基本について学ぶ。系の考え方および,第一法則について学習する。
7 熱力学第一法則(エンタルピー)
比熱および,エンタルピーの定義について学習する。
8 中間試験
1-6週の内容に関する試験を行う。
9 中間試験解答
中間試験の解答を黒板を用いて説明し,注意点を指摘する。
10 熱力学第一法則(反応熱)
物理変化および化学変化に対するエンタルピー変化の求め方について学習する。
11 熱力学第二,三法則(エントロピー)
熱力学の第二,三法則から,エントロピーの定義について理解する。
12 エントロピー変化
物理変化および化学変化に対するエンタルピー変化の求め方について学習する。
13 自由エネルギー
Gibbsエネルギーの定義とについて理解する
14 自由エネルギー変化と反応の進行
Gibbsエネルギー変化から反応の進行方向の判断の関係について学習する。
15 演習問題
熱力学に関する諸問題についての演習問題を解く
16 運動の表し方
質点の位置を座標としてあらわし,質点の位置が位置ベクトルというベクトルで表現できることを説明し,ベクトル同士の演算について解説する。
17 速度と加速度
ベクトルの微積分を説明し,速さや速度,加速度について解説する。
18 運動(ニュートン)の法則
運動の3法則(慣性の法則,運動方程式,作用・反作用の法則)について解説し,運動が2階の常微分方程式で表されることを示す。
19 重力下での運動
一番基本的な系として重力下での質点の運動を取り上げ,いろいろな公式が運動方程式より導出できることを解説する。また,運動方程式のエネルギー積分より,エネルギー保存則を解説する。
20 単振動
調和振動子や強制振動等の基本的な系について運動方程式を解き,単振動の運動について解説する。
21 束縛運動
力の釣り合いや作用・反作用について説明し,束縛力のある場合の基本的な物理系について解説する。
22 エネルギーと仕事
力学的な仕事を定義し,力学的エネルギー保存則について解説する。
23 中間試験
16〜22週の内容について試験を行う。
24 非慣性系での運動
運動の座標変換について,慣性系間での座標変換・ガリレイ変換を説明した後,回転系等の非慣性系への座標変換を考え,遠心力やコリオリの力等の慣性力について解説する。
25 運動量保存則
互いに力を及ぼしあって運動する,質点系の運動方程式について説明し,運動量,運動量保存則について解説する。
26 衝突の問題
運動量保存則を応用し,基本的な衝突問題を解説する。また,弾性係数や力積,エネルギー保存則についても解説する。
27 中心力場における2体問題
惑星の運動よりケプラーの法則と万有引力等を説明し,角運動量や角運動量保存則等について解説する。
28 剛体の力学の基礎
外力を受けている質点系の運動方程式から始めて,力のモーメント等を定義し,剛体系の運動方程式や基本的な運動を解説する。
29 剛体の平面運動
剛体に働く力の釣り合い等を考えて慣性モーメントを定義し,特定の軸周りの回転運動等,剛体の平面運動について解説する。
30 自由空間の剛体系
回転ベクトルを定義し,自由空間での剛体の運動について簡単に解説する。


中間試験および定期試験を実施する。