【 2006 年度 授業概要】
科   目 音響工学 ( Acoustics )
担当教員 跡地 信久
対象学年等 電子工学科・5年・前期・選択・1単位 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
A4-1(100%) (d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g)
授業の概要
と方針
将来,音響情報通信関連のグローバル製造&ソフト企業,放送業界,教育関連,IT関連企業,等の実務技術者として必要な音響工学の基礎知識,開発技術(主にスピーカ)を習得させる。音響工学の範囲は非常に広くなってきているので,基本である物理音響,電気音響の基礎に絞って学習させる。【学習課題】にはパソコンを使った計算問題を多く取り入れる。



1 【A4-1】  高調波の波形合成(フーリエ級数展開,矩形波,鋸歯状波,等含む)から音色の高調波構造を説明できる。
2 【A4-1】  種々の音源の特性(放射)インピーダンス密度を理解し,それ等の理論式を定性的に粗く描画できる。
3 【A4-1】  主な音響用語を説明でき,さらには数式で表すことができる。
4 【A4-1】  音響管内の定常状態での音圧,粒子速度分布の理論式導出,及びそれ等の数値計算結果をグラフに書ける。
5 【A4-1】  平面ピストン音源の放射質量MA,振動変位ξ,指向関数Dγを計算できる。
6 【A4-1】  種々の音響ホーンの側壁関数を定性的に描画でき,さらには具体的な設計条件でのエクスポネンシャル・ホーンの設計計算ができる。
7 【A4-1】  ヘルムホルツ共鳴器の原理を説明でき,及びその共振周波数を計算できる。
8 【A4-1】  弦や気柱の長さを自然律音階によって,音階を決められる。
9 【A4-1】  簡単な機械振動系モデルの電気機械等価回路が書け,その回路解析(変位ξ,速度V,加速度α)ができる。
10 【A4-1】  電気音響変換器(スピーカ)の電気機械等価回路が書け,機械インピーダンスZM, 振動変位ξ,振動速度V, 振動加速度α,最低共振周波数f0,出力音圧Prを計算できる。












1 sin波の高調波合成,矩形波,鋸歯状波,三角波,等のフーリエ級数による高調波合成をパソコンで計算させ,グラフが書けるかをレポート提出で評価する。
2 種々の特性(放射)インピーダンス密度の導出式を理解し,その式をグラフに書けるかどうかを定期試験で評価する。
3 主な音響用語(10数ケ)の虫食い説明文の補完,或いは説明文が書けるかどうかを定期試験で評価する。
4 具体的な寸法と条件を与えた音響管において,音圧P,粒子速度Uのグラフが書けるかどうかをレポートで評価する。
5 あるバッフル条件での音源(スピーカ)において,その放射質量MA,振動変位ξ,指向関数Dγを計算させ,レポートで評価する。
6 特定な条件を与えた音響ホーン群を描画させたり,またエクスポネンシャル・ホーンの寸法を設計する事例を定期試験で評価する。
7 ヘルムホルツ共鳴器の原理図において,寸法と条件を与えて共振周波数の数値計算を定期試験で評価する。
8 具体的な寸法や境界条件を与えて,弦や気柱の共振周波数比の関係式から,自然律音階を決められるかどうかをレポートで評価する。
9 簡単な機械振動系モデルを与えて,その等価回路を書かせ,また回路解析が出来るかどうかを定期試験で評価する。
10 電気機械等価回路の具体的な等価定数を与えて,上記の目標項目の計算が出来るかどうかを定期試験で評価する。




成績は,試験70% レポート20% プレゼンテーション10% として評価する.プレゼンテーションとは,授業中の質疑応答で理解度をチェックする。
テキスト 「電気音響工学の基礎」:跡地信久著(興文社)
プリント
参考書 「電気音響工学」標準電気工学講座:実吉純一著(コロナ社)
「音響振動工学」大学講義シリーズ:西山静男,池谷和夫,山口善司,奥島基良,共著(コロナ社)
「音響用語辞典」:日本音響学会編(コロナ社)
関連科目 数学I,応用数学
履修上の
注意事項
音響波動方程式は2階の偏微分方程式から成るので,「数学I」の復習は必須です。矩形波,鋸歯状波,三角波,等の波形は「応用数学,第4章」(大日本図書)を復習すること。また交流直列共振回路の電圧,電流,インピーダンスの実効値や複素数の取り扱いも勉強しておくこと。

【授業計画( 音響工学 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 緒論
音響工学の範囲,音響産業の変遷,音造りと音質,音の三要素と音響機器の性能,音波の物性を学習する。
2 物理音響学入門
音波の物理量と感覚量,音の大きさと等感曲線(聴覚の感度曲線)を理解する。音響波形や音色を決めている高調波構造をsin波の合成で理解する。 また音の大きさや音響パワーの定義から合成音圧,合成パワーのデソベル(dB)計算ができる。
3 平面波動方程式の導出,音響管内の音圧,粒子速度の分布
音響管内の波動方程式の導出,これより特性(放射)インピーダンス密度を導き出し,音響インピーダンスの定義,エネルギー密度,音の強さを理解する。
4 閉管の定在波,音響管内の消音理論と実験 《クントの実験》
音響管内の定常状態での粒子速度分布を可視化デモにより,観測して理解する。 その分布をパソコンで計算してグラフに描く。 また消音理論の原理的な実験を行い,理解すると共にパソコンで計算してグラフに描く。 【学習課題2−1,2,3】を学習する。
5 球面波動方程式の導出 《呼吸球スピーカの紹介》
球面波の放射インピーダンス密度を導き出し,これを数値計算してグラフに描き,その波動の性質を理解する。【学習課題2−4】を学習する。
6 ピストン振動板の放射理論と指向関数
平面ピストン振動板の放射インピーダンス密度を導き出し,放射質量MAを求める。 また,Rayleigh卿の音場理論より指向関数Dγを導き出し,指向角を求める。 【学習課題2−5】を学習する。
7 円形ピストン振動板の放射インピーダンス 《平面スピーカの紹介》
上記の6 回で導出したインピーダンス密度より,放射質量MAを計算してグラフに描いて理解する。 次に放射理論より振動板の振動変位ξ,振動加速度α,出力音圧Pr を求める。 【例題2,3】を学習する。
8 音響ホーン内の波動方程式と解法
平面波動方程式の導出と同じ手法で,ホーン内の波動方程式を導出する。 その波動方程式を解き,喉面,及び口面特性インピーダンスを求める。
9 中間試験
中間にレポートを提出させ,中間試験に換える。 レポート課題は「到達目標の評価方法」の記述に従い,グループ毎に課題を違わす。
10 中間レポート解答コメント,及び喉面,口面インピーダンス,ホーンによる指向性
レポートの解答コメントをプリントして説明する。 上記8 回で求めた喉面,口面インピーダンスを定性的に描画して,その性質を理解する。 【学習課題3−2,3】を自習させる。 次に,ホーンによる指向性利得や一定指向角を理解する。 【例題1】でエクスポネンシャル・ホーンの実用設計法を学習する。
11 単一共振系の自由振動,強制振動と電気機械等価回路
単一共振系の振動モデルを電気機械等価回路に書いて,共振周波数 f0,振動変位ξ,振動速度V,振動加速度αの周波数特性を求め,それ等の関係を理解する。 【学習課題4−1】を学習する。 次に,【研究課題】弦の振動方程式を解いて,共振周波数と弦の長さとの関係を学ぶ。
12 電気機械等価回路の計算,ヘルムホルツ共鳴器と音響変成器
第4章【例題2】の振動モデルを解いて,理解する。音響系の空洞共鳴を等価回路に書いて,交流電気回路の手法でヘルムホルツ共鳴器の共振周波数を求める。 断面積の異なる管や空洞を結合した場合,その結合部の音響変成器について学習する。
13 電気音響変換器の形態分類とスピーカの変換理論
機能や目的,用途による3つの分類を理解する。 電磁変換理論,及びフレーミングの左手の法則によるダイナミック形スピーカの変換原理を学習する。
14 ダイナミック・スピーカの設計理論
電気音響変換器(スピーカ)の機械系を等価四端子網手法を用いて,電気機械等価回路を書く。 そして振動変位ξ,振動速度V,振動加速度αから出力音圧Prを求める。 第5章【例題1】を学習する。
15 講義のまとめ
講義のまとめを行う。


中間試験は実施しない.定期試験を実施する.