【 2006 年度 授業概要】
科   目 制御工学II ( Control Engineering II )
担当教員 笠井 正三郎
対象学年等 電子工学科・5年・通年・必修・2単位 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
A4-3(100%) (d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g)
授業の概要
と方針
年次の制御工学Iを基礎とし,状態方程式に基づくシステムの表現,制御系の設計,評価方法を講義する。また,実際にコンピュータを用いて制御を行う場合に必要となるディジタル制御についても講義する。最後に,光ディスクドライブを例として実際の制御系について説明する。



1 【A4-3】  古典制御と現代制御の違いを理解する。
2 【A4-3】  状態方程式による線形システムの記述ができるようになる。
3 【A4-3】  線形システムの安定性について説明できるようになる。
4 【A4-3】  状態フィードバック制御の設計ができるようになる。
5 【A4-3】  離散時間系の表現(z変換)を理解する。
6 【A4-3】  パルス伝達関数を求めることができるようになる。
7 【A4-3】  有限整定応答について説明できるようになる。
8 【A4-3】  実際の器機で実装される制御器の実現方法を理解できる。
9  
10  












1 前期中間試験により評価する。
2 レポート及び,前期中間試験,前期定期試験により評価する。
3 前期中間試験,前期定期試験により評価する。
4 前期定期試験により評価する。
5 レポート及び,後期中間試験,後期定期試験により評価する。
6 後期中間試験,後期定期試験により評価する。
7 後期定期試験により評価する。
8 後期定期試験により評価する。
9  
10  




成績は,試験90% レポート10% として評価する.なお,試験成績は前期成績と後期成績の平均点とする。各期の成績は中間試験を40%,定期試験を60%とする。
テキスト 「制御工学 古典から現代まで」:奥山佳史他共著(朝倉書店)
参考書 「自動制御」: 伊藤正美著(丸善)
「システム制御の講義と演習」:中溝,小林共著(日新出版)
関連科目 D4「制御工学I」,D3「電気数学」
履修上の
注意事項
本講義では,4年次で学習する制御工学Iに加えて,線形代数(行列など)の知識が必要となるので, 十分復習しておくこと。

【授業計画( 制御工学II )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 古典制御と現代制御
4年次の制御工学Iと比較しながら,今年度行う制御工学IIの内容について1年間の計画について説明を行う。特に現代制御では,行列を用いて線形代数,微分方程式をよく用いるので,簡単な復習を行う。
2 状態方程式によるモデル化
制御を行いたいものを制御対象といい,機械的な物であったり,電気的な物であったり,複合的な物であったり,様々である。これら制御対象を物理的,数学的なモデルで表すと,物体の運動を表わす変数に関する微分方程式の形(状態方程式)になることを具体例を通して見ていく。
3 状態方程式と伝達関数の関係
この科目では,一般的に表現された状態方程式に対して,線形のものに限定して取り扱う。非線形のものに対しては,平衡点付近で線形化近似が行えることを知る。線形の状態方程式をラプラス変換することにより,入力と出力の関係(伝達関数)が求まり,それが4年次に習った伝達関数と一致することを学習する。
4 状態空間表現の多様性
伝達関数は入力から出力までの信号が伝わる部分しか表現されず,構造が異なるシステムに対しても伝達関数が同じであれば区別がつかないが,状態方程式ではそれらが異なった表現で表せる。このように状態方程式表現が伝達関数表現より多くの情報を持つことを具体的な例を用いて学習する。
5 状態方程式の解
状態方程式の解法について,まず最初に外部入力を持たない自由系について解を求め,次に外部入力をもつ強制系について,自由系の解をもとに導く。また,実際に計算を行う場合,行列指数関数(EXP(At):Aは行列)を求める必要があり,その求め方についても説明する。
6 システムの安定判別
システムの安定性とは何かについて説明を行い,安定判別が状態方程式の行列Aの性質(固有値)によって判別できることを説明する。具体例を用いて,安定判別を行う。*次週の演習問題プリント配布
7 演習
1週目から6週目の内容について,演習問題を行う。
8 中間試験
1週目から7週目の内容について,理解度を確認できる試験を行う。
9 試験の解答とこれまでの注意点確認
前期中間試験の解答を行い,試験範囲での注意点を再度確認させる。
10 線形システムの構造
システムの状態変数表現は一意ではなく,線形変換によってもシステムの特性(伝達関数とか固有値など)は変化しない。したがって,モデルを状態方程式で表現する場合とか,制御系を設計する場合とか状況に応じて便利な表現をとることができる。この線形変換と線形変換によって変らない特性について学ぶ。
11 可制御性と可観測性
伝達関数に基づく制御は,基本的に入力によって出力が変化するものを扱っている。しかし,実際のシステムでは全ての内部状態が入力の影響を受けるとはかぎらず,また,全ての内部状態が出力に現れるともかぎらない。状態方程式では,それらを可制御性,可観測性として判別することができる。
12 状態フィードバックによるシステムの安定化
可制御なシステムでは,各状態変数に適当な係数を掛けた和を制御入力に戻すことにより(状態フィードバック),任意の応答が実現できる。すなわち,システムの安定化,応答改善が可能である。このことを示すとともに,改善させたい極への配置方法について,可制御正準形の場合について学ぶ。
13 フィードバック制御系の設計1(極配置法)
一般のシステムの場合について,極配置法のフィードバック係数の求め方を学習する。
14 フィードバック制御系の設計2(最適制御)
最適制御の概念を理解する。そして,2次形式で表現された評価関数を最小にする最適制御が状態フィードバックにより実現できることを知り,2次のシステムについて実際にフィードバック係数を求め,制御後の応答特性を評価する。*次週の演習問題プリント配布
15 演習
10週目から14週目の内容について,演習問題を行う。
16 試験の解答とこれまでの注意点確認
前期定期試験の解答を行い,試験範囲での注意点を再度確認させる。
17 離散時間システム
近年,ディジタル技術の進歩により,複雑な制御器もマイクロコンピュータやDSPを利用して実現できるようになって来た。これらを利用する場合,扱われる信号は連続的に変化するのではなく一定時間間隔で変化する。このようなシステムを離散時間系という。後半は離散時間系の場合についてどのように扱うか学ぶ。
18 連続時間系から離散時間系への変換
連続時間で表現されている状態方程式を,一定時間間隔でサンプルしたときに同等となる離散時間方程式(状態推移方程式:差分方程式)を導出する。
19 Z変換とその基本的な性質
離散時間を表現する場合,従来のラプラス変換では,時間遅れが有理式とならず,システムの合成,応答などを求めることが難しくなる。その点を解決する手段として,Z変換を導入し,その基本的な性質を理解する。
20 システムのパルス伝達関数
状態推移方程式をZ変換し,連続時間系での伝達関数に相当するパルス伝達関数を求める。また,パルス伝達関数より離散時間系でのフィードバックシステムの合成を行う。
21 逆Z変換
逆Z変換は,Z変換で表現されたパルス伝達関数などをもとの時間領域の関数に戻す変換である。ただし,Z変換によりサンプル点間の値は失われるので,逆変換されたものは,サンプル点での値だけであることに注意する。*次週の演習問題プリント配布
22 演習
17週目から21週目の内容について,演習問題を行う。
23 中間試験
17週目から22週目の内容について,理解度を確認できる試験を行う。
24 試験の解答とこれまでの注意点確認
後期中間試験の解答を行い,試験範囲での注意点を再度確認させる。
25 離散時間系のフィードバック構造と安定性
離散時間系では,サンプラ間で区切られた連続応答素子で1つのブロックとなり,システムの合成を行う場合には,どこでブロックを区切るか注意する必要がある。これらの注意点を例題により確認する。また,離散時間系でのシステムの安定性,双一次変換により連続時間での安定判別の利用などについても説明を行う。
26 有限整定応答
離散時間制御で特徴的な有限整定制御について説明を行う。有限整定とはある有限サンプル時間で目標値に一致する制御のことであり,離散時間制御の場合にこのような制御を実現出来る場合がある。有限整定には,サンプル点でのみ目標値と一致している場合と,ある時間以上で完全に一致している完全有限整定がある。
27 拡張Z変換
通常の離散時間系ではZ変換を用いるが,この場合,サンプル点間の応答は分からない。サンプル点間の応答を求める方法として,Z変換を拡張したのが,拡張Z変換である。拡張Z変換がどのようなものであるか,基本的な性質などを学習する。
28 拡張Z変換による制御対象の応答特性解析
拡張Z変換を用いて,有限整定制御の応答解析を行い,完全有限整定かどうか判断する。
29 情報機器を例とした実際の制御機器
情報機器の例として,光ディスクのトラッキング制御について説明する。ここでは,従来の連続時間制御で実現されていたシステムにDSPを用いて離散時間制御を行った実例を紹介する。
30 演習
25週目から29週目の内容について,演習問題を行う。


中間試験および定期試験を実施する.