【 2006 年度 授業概要】
科   目 応用数学 ( Applied Mathematics )
担当教員 笠井 正三郎
対象学年等 電子工学科・4年・通年・必修・2単位 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
A1(100%) (c),(d)1
授業の概要
と方針
3年次の電気数学に引き続き,電気電子系専門科目の基礎として重要なベクトル解析,複素関数論,フーリエ級数,フーリエ変換について修得する。



1 【A1】  空間曲線と曲面の形や性質をベクトルを用いて表現することができる。
2 【A1】  ベクトル場あるいはスカラー場に対して,勾配・発散・回転を計算できるとともに,その物理的意味・幾何学的意味を概ね理解できる。
3 【A1】  線積分と面積分の意味が理解でき,発散定理とストークスの定理の使い方がわかる。
4 【A1】  コーシーの定理,コーシーの積分表示を簡単な複素関数の積分に適用できる。
5 【A1】  留数の意味を理解し,その性質を使って実数関数の無限積分等の特殊な積分を求めることができる。
6 【A1】  任意の周期波形(関数)が,sin, cos関数から合成できることを理解し,フーリエ級数の重要性を理解する。
7 【A1】  周期を持たない関数に対しては,フーリエ積分を考えることと,それから複素形フーリエ積分を導いて,フーリエ変換の定義式が導かれることが理解できる。
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1 具体的な位置ベクトルで示された空間曲線や曲面に対して,曲線の長さや単位接線ベクトル,単位法線ベクトルを正しく求められるかどうかを,前期中間試験で評価する。
2 与えられたスカラー場,あるいはベクトル場に対して,勾配・発散・回転を正しく求められるかどうかを前期定期試験によって評価する。
3 簡単な場の問題に対して,ガウスの発散定理とストークスの定理を適用してベクトル関数の積分を求めることができるかどうかを前期定期試験で評価する。電気磁気学への応用をレポートで評価する。
4 さまざまな関数の積分問題に対して,コーシーの定理とコーシーの積分表示の使い分けができ,積分値を求めることができるか後期中間試験で評価する。
5 簡単な複素積分を留数を使って求めることができるか,さらには実関数の無限積分を求めることができるかを,後期中間試験で確認・評価する。
6 簡単な周期波形をフーリエ級数に展開でき,フーリエ級数の基本的性質が説明できることを後期定期試験で,幾つかの周期関数に対してフーリエ級数で合成できることをレポートで評価する。
7 基本的な関数に対してフーリエ積分表示できること,また,この関係を積分を求めるのに応用できるかを後期定期試験で評価する。
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成績は,試験90% レポート10% として評価する.なお,試験成績は4回の試験の平均とする。
テキスト 「応用数学」:田河生長他著(大日本図書)
参考書 「基礎解析学コース−ベクトル解析」:矢野健太郎・石原繁共著(裳華房)
「基礎解析学コース−複素解析」:矢野健太郎・石原繁共著(裳華房)
「基礎解析学」:矢野健太郎・石原繁共著(裳華房)
「応用解析学入門」:白井宏著(コロナ社)
関連科目 D3「電気数学」
履修上の
注意事項
電気数学に限らず,1年〜3年で習った数学をよく理解できていることが大切である。特に微分積分学,三角関数,指数関数,対数関数をよく理解しておいて欲しい。 授業の進捗のペースが早いので,予習・復習に努め,その都度授業内容を理解するよう心がけてほしい。

【授業計画( 応用数学 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 年間の授業ガイダンスとベクトルとスカラ,ベクトルの表示と基本演算
前半は,本講義で1年間何を学び,それがどのような分野で活用されるか説明し,動機付けを行う。後半は,ベクトルの表現,加算,減算,スカラ倍の演算について復習するとともにそれぞれがどのように用いられるか紹介する。
2 ベクトルの内積と外積
ベクトルの内積について復習するとともに,ベクトルの外積について,その定義と応用について学ぶ。
3 ベクトル関数(ベクトルの微分,速度,加速度)
空間内の物体位置はベクトルで表現され,その物体の運動はベクトル変数の微分により,速度,加速度として表わされる。物体の運動をベクトルを用いて表現する。
4 曲線と曲面
曲線,曲面などの幾何学的な特徴を,ベクトルを用いて表現することを学ぶ。
5 スカラー場とベクトル場
空間内の物理的な量(流れ,エネルギーなど)を表現する場合,大きさだけが定義されるものはスカラー場,大きさと方向をもつものをベクトル場で表現することができ,これらを数学的に扱う手法について説明する。
6 スカラー場の勾配
スカラー場φに対して,それをx, y, z で偏微分したものを成分とするベクトルとして,スカラー場の勾配を定義する。 勾配の求め方,物理的意味,勾配の公式を解説する。
7 ベクトル場の発散と回転
ベクトル場に対して発散というスカラー量と,回転というベクトル量を定義して示し,それらの物理的意味を説明する。
8 前期中間試験
1週〜7週の内容についての理解度を測るための試験を行う。
9 試験解答と復習
中間試験の解答を行うとともに,再度,重要な点について理解を深める。
10 線積分
スカラー場とベクトル場の線積分の定義と,媒介変数 t の積分に変換してそれらの値を求める方法を示す。
11 グリーンの定理
線積分から領域積分への変換式を与えるグリーンの定理について,その証明と具体的な応用例を示す。
12 面積分
スカラー場とベクトル場の面積分を定義し,それらを具体的に求める手順を示す。
13 ベクトルの発散とガウスの発散定理
ベクトルの発散とは何かについて説明するとともに,ガウスの発散定理の物理的意味,証明の手順を解説し,その定理の極めて有効な適用事例を紹介する。
14 ベクトルの回転とストークスの定理
ベクトルの回転とは何かについて説明するとともに,ストークスの定理の証明の考え方を示し,この定理の有効な適用事例を示す。
15 総合演習
ベクトル解析全般(特に10週〜13週に重点をおいて)に関して,演習を行う。
16 試験解答と複素関数の復習
前半は,前期定期試験の解答を行い,ベクトル解析のまとめとする。後半は,3年次に学んだ複素関数について復習する。
17 複素積分
実変数関数の積分では,積分経路によって積分値が異なることは無いが,複素関数に対する積分の場合には,積分経路によって値が異なることがある。どのような条件で積分経路により積分値が異なるか調べてみる。
18 コーシーの積分定理
複素関数論における基本的で,かつ重要な定理であるコーシーの定理が,複素積分の定義式にグリーンの定理とコーシーリーマンの関係式を適用することによって導かれることを示す。
19 コーシーの積分表示
単一閉曲線の内部で複素関数 f(z) が正則であるとき,その内部の一点αにおける複素関数の値 f (α) ,あるいはその微分形が,コーシーの積分表示と呼ばれる積分形の式で与えられることを導く。また,それを複素積分の計算に適用できることを示す。
20 孤立特異点と関数の展開(ローラン展開)
孤立特異点の定義を説明し,その近傍で関数を級数展開する(ローラン展開)と,負のべき乗項を伴うことを示すとともに,ローラン展開を求める具体的な方法を示す。
21 留数の定義と留数の計算方法
孤立特異点αを内部に含む単一閉曲線まわりの f(z) の積分を2πi で除したものを留数と定義し,それがローラン展開における1/(z-α)の係数に等しいことを導く。
22 留数定理とその応用
留数の拡張形として留数定理が容易に導かれること,また留数定理を用いれば具体的な実積分問題,特に無限積分問題が比較的容易に解けることを示す。
23 後期中間試験
複素関数に関して16週から22週で学んだことの理解度を試験により評価する。
24 試験解答と復習
後期中間試験の解答を行うとともに,間違いやすい点,重要な点について復習する。
25 フーリエ級数展開の定義
周期関数が,定数及びその周期の整数倍の正弦波,余弦波によって表現できることを説明するとともに具体的な計算方法を示す。
26 フーリエ級数の収束
フーリエ級数は,元々の関数と完全に一致するとは限らない。では,フーリエ級数はどのような値に収束するのか説明する。
27 偏微分方程式への応用
フーリエ級数の応用として,偏微分方程式の解法の例を紹介する。
28 フーリエ積分の定義と定理
フーリエ級数展開は,周期関数に対して定義されるものであったが,一般の関数は周期関数とは限らない。このような一般の関数を周期無限大の周期関数として拡張すると級数表示が積分に代わり,フーリエ積分と呼ばれる形になる。このフーリエ積分の定義と基本的な定理について紹介する。
29 フーリエ変換の性質と公式
フーリエ変換の基本的な性質と基本的な公式について説明する。
30 フーリエ変換の応用
フーリエ変換は,フーリエ級数と同様に偏微分方程式を解くのにも応用されるが,それ以外に,電気関係では,時間領域で表現された信号が,フーリエ変換により,周波数領域の信号が求められる。これにより,いろいろな信号処理を理解することを助ける。代表的な例を紹介する。


中間試験および定期試験を実施する.