【 2006 年度 授業概要】
科   目 応用物性論 ( Applied Physical Property )
担当教員 久保田 博信
対象学年等 応用化学科・5年・後期・選択・1単位 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
A4-3(100%) (d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g)
授業の概要
と方針
工学的に重要な実在流体に焦点を絞り,その純物質ならびに混合物の熱力学的取り扱い方,基礎物性の高圧力下における挙動や推算法等,企業の現場で必要とされる事柄について講述する。理解を深めるために自作の資料を用い,演習等を頻繁に行う。



1 【A4-3】  理想気体と実在気体の違いを理解し,実在気体の挙動は理想気体の法則をどのようにして修正して求められるかを習得する。
2 【A4-3】  希薄溶液の溶質および溶媒の性質を理解し,混合物中の各成分に熱力学的性質をどのように割り振るかを習得する。
3 【A4-3】  実際に工場等の現場で働く場合にしばしば必要となる流体物性について,その理論的および経験的予知法の基礎を習得する。
4 【A4-3】  工場の現場で多用されている高圧プロセスを取り扱う場合に必要な,高圧力下の流体物性に対する基礎知識を習得する。
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1 実在気体のP-V-T関係を求めることができるかを演習および定期試験で評価する。
2 溶液の部分モル量,溶媒と溶液の自由エネルギーおよび束一的性質が理解できているかを,演習および定期試験で評価する。
3 簡単な準物質および混合物の臨界点,蒸気圧,圧縮係数,蒸発潜熱,熱容量および粘性率を算出することができるかを,演習および定期試験で評価する。
4 流体圧力の特徴や圧力効果の考え方について,質疑応答の形式で各人の理解度を評価する。
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成績は,試験80% プレゼンテーション20% として評価する.
テキスト プリント
参考書 バーロー物理化学第6版(東京化学同人)
粘度と熱伝導率(培風館)
関連科目 物理化学
履修上の
注意事項
講義中に疑問を感じた場合には直に質問すること。

【授業計画( 応用物性論 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 実在気体のPVT関係
実在気体のPVT関係は理想気体の状態方程式を経験的に修正して記述されることを理解させる。
2 臨界点と対応状態の原理
臨界点の意味と,この臨界点が気体の非理想を取り扱うときの便利な参照点であることを理解させる。
3 実在気体の状態方程式
van der Waals状態方程式を例にとり,その数学的表現の基礎となる排除体積や分子間相互作用について理解させる。
4 理想混合物の熱力学
理想混合物はどのような式で生成自由エネルギーが与えられるかを理解し,理想混合物では混合による体積変化,エンタルピー変化およびエントロピーについて考える。
5 混合物の成分の熱力学
混合物中のある成分の体積,エンタルピー,エントロピーあるいは自由エネルギーは何を意味するのであろうか。この問題に答えるために,測定できる溶体の熱力学的性質を各成分にどのように帰属するかを理解させる。
6 溶液およびその成分の自由エネルギー
液体混合物の成分の自由エネルギーは,その蒸気圧から導くことができることを理解させる。
7 溶媒と溶質
溶媒と溶質の化学ポテンシャルを表すために,Raoultの法則およびHenryの法則を理解させる。
8 演習
これまでに学習したことの理解を深めるため,適当な演習問題を解かせ,解答する。
9 流体物性推算法概論
物性データ予知の基礎となる分子間性質と分子内性質を理解し,それに基づく化学構造による化成性や対応状態の原理などの手法についての知識を深める。OHPを使用する。
10 臨界定数
臨界定数は対応状態の原理を用いる際の基礎となるデータであり,種種の予知法が考案されているが,ここではそのうちの代表的な予知法についての知識を深める。OHPを使用する。
11 気体および液体のPVT関係
一般化圧縮係数線図の使用法に習熟するとともに飽和液密度の推算に必要な手法をOHPを使用して解説する。
12 蒸気圧
Clausius-Clapeyronの式に基づいて作成された推算式を理解するとともに,種種の線図の利用法を習得させる。OHPを使用する。
13 演習
ここでは,石炭のガス化プロセスや液化について説明する。得られた合成ガスから水素の製造やタール製品に含まれるさまざまな化学物質を基幹物質として使用するコールケミストリーについて概観する。
14 化石燃料:天然ガスとLNG
天然ガスやメタンハイドレード資源におけるメタンから,C1ケミストリーへの展開やフィッシャートロブシュ合成について説明し,化学工業における触媒のはたす役割について述べる。
15 燃焼の理論
炭素燃料の燃焼における熱化学方程式を理解させる。理論燃焼の考え方や大気汚染の問題はどのようにして発生するのかを詳しく説明する。


中間試験は実施しない.定期試験を実施する.