【 2006 年度 授業概要】
科   目 生物 ( Biology )
担当教員 津田 久美子
対象学年等 応用化学科・2年・通年・必修・2単位 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
授業の概要
と方針
生物学の基礎を形態学・発生生物学・生化学・分子生物学的視点で講義する。前期では,細胞・生殖と発生・生物体のエネルギー獲得機能について学習する。後期では,遺伝のしくみと遺伝情報の発現について学習する。なお,随時現代社会における生物科学技術の応用例,生命科学に課せられた問題点について解説する。



1 細胞の構造と細胞小器官の機能を理解できる。
2 細胞の増殖の方法と生物体の構造の多様性を理解できる。
3 生殖細胞の形成過程と受精のしくみを理解できる。
4 エネルギー代謝の概念と異化・同化の過程を理解できる。
5 さまざまな遺伝のしかたと遺伝子と染色体との関わりについて理解できる。
6 遺伝情報にもとづくタンパク質の合成方法を理解できる。
7 バイオテクノロジーとその利用法を理解し,その問題点について考察できる。
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1 細胞の構造と細胞小器官の機能を理解できているか,前期中間試験で評価する。
2 細胞の増殖の方法と生物体の構造の多様性を理解できているか,前期中間試験で評価する。
3 生殖細胞の形成過程と受精のしくみを理解できているか,前期中間試験および定期試験で評価する。
4 エネルギー代謝の概念と異化・同化の過程を理解できているか,前期定期試験および実験レポートで評価する。
5 さまざまな遺伝のしかたと遺伝子と染色体との関わりについて理解できているか,後期中間試験で評価する。
6 遺伝情報にもとづくタンパク質の合成方法を理解できているか,後期定期試験で評価する。
7 バイオテクノロジーとその利用法を理解し,その問題点について考察できているか,レポートで評価する。
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成績は,試験70% レポート30% として評価する.
テキスト 資料プリントを随時配布する。
参考書 授業で随時紹介する。
関連科目 なし
履修上の
注意事項
特になし

【授業計画( 生物 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 本講義の概説 細胞説と細胞の研究法
本講義の目標と,受講する上での注意事項の説明を行なう。生物の構成単位である細胞について概説することで,生物の定義について考える。
2 細胞の機能と構造:植物細胞と動物細胞
細胞についての研究から,細胞には多様性があると同時に,どの細胞にも共通する生命の営みがあることが明らかとなった。植物細胞と動物細胞の基本構造を比較しながら,その相違点と共通点を学習する。
3 細胞の機能と構造:細胞内小器官
生物の細胞は種々の細胞内小器官から構成されている。各細胞内小器官は,自己複製・エネルギー獲得・物質の合成と運搬などの重要な役割を担っている。その役割分担と仕組みについて学習する。
4 細胞の増殖と分化
細胞は細胞分裂によって増殖する。生物体をつくる体細胞が分裂するときにおこる体細胞分裂の過程について,動物細胞と植物細胞とを比較しながら学習する。
5 生物体の構造
自然界には多様な生物が存在し,からだの構造も異なっている。原核生物と真核生物,単細胞生物と多細胞生物,植物体と動物体の構造を比較しながら,その多様性について学習する。
6 生殖の方法
「自己と同じ種類の新しい個体をつくることによって増殖する」,これは生物の最も重要な特質の一つであり,生殖とよばれる。生殖のしかたにはさまざまな方法があるが,配偶子によらない無性生殖と配偶子による有性生殖とに大きく分けられる。その相違点について学習する。
7 減数分裂
配偶子などの生殖細胞ができる過程では,染色体数が半減する減数分裂という特殊な細胞分裂がおこる。減数分裂の過程と,減数分裂と有性生殖によってできる子の多様性について学習する。
8 中間試験
第1週から第7週までの内容について,中間試験を実施する。
9 中間試験解答 動物の配偶子形成と受精
動物の雌は配偶子として卵をつくり,雄は配偶子として精子を形成する。その後,卵と精子は受精して受精卵ができる。精子・卵の形成過程および動物の受精のしくみについて学習する。
10 植物の配偶子形成と受精,胚発生
被子植物が有性生殖を行う場合は,雄性配偶子である精細胞と雌性配偶子である卵細胞が合体し,受精する。被子植物の配偶子形成過程,受精のしくみおよびその後の胚発生と種子形成のしくみについて学習する。
11 エネルギー代謝とATP
生物体を構成する物質の大部分は,代謝によって絶えず合成されたり分解されたりしている。また,生物体内に見られる秩序は,代謝によって維持されている。代謝の概念と,生物体内で代謝のなかだちをしているATPについて学習する。
12 異化
生物体内に取り入れた物質を簡単な物質に分解する代謝を異化といい,呼吸はその代表例である。呼吸には酸素を使う好気呼吸と酸素を使わない反応過程だけからなる嫌気呼吸があり,エネルギー生産効率に大きな差がある。その相違点について学習する。
13 実験:アルコール発酵の実験
嫌気呼吸の代表例であるアルコール発酵について,酵母菌を用いた実験で確認する。
14 同化:植物の光合成
植物などが外界から二酸化炭素をとり入れ,これを炭素源として有機物を合成する働きを炭酸同化といい,光合成はその代表例である。光合成の発見の歴史と反応経路について学習する。
15 同化:細菌の光合成と化学合成
細菌の多くは,栄養となる有機物を他の生物に依存して生活する従属栄養生物である。しかし,植物のように光エネルギーを利用して光合成を行う細菌も存在する。また,光エネルギーのかわりに無機物を酸化するときに得られる化学エネルギーを用いて二酸化炭素を固定し,有機物を合成する細菌も存在する。そのしくみを学習する。
16 前期定期試験の解答 遺伝の法則
親の形質(特徴ある形態や形質)が子に受けつがれる現象を遺伝といい,生物特有のものである。メンデルの法則を中心に,遺伝を支配する諸法則について概説する。
17 いろいろな遺伝
対立遺伝子の働きかたの違いにより,形質のあらわれかたが,メンデルの法則に従わないように見える場合がある。そのようなさまざまな遺伝のしくみについて学習する。
18 遺伝子と染色体の関係:連鎖
遺伝子は染色体に存在するという考えを染色体説と呼ぶ。染色体説によって,連鎖という現象をうまく説明することができる。そのしくみについて学習する。
19 遺伝子と染色体の関係:組換え
対立遺伝子が連鎖しているときに,配偶子形成の際に新しい組み合わせになることを,遺伝子の組換えという。そのしくみと,組換えの起こる割合(組換え価)の算出方法について学習する。
20 性の決定と伴性遺伝
雌雄が分かれている生物では,遺伝的な性の決定に性染色体が関わっている。性染色体には,性に決定する遺伝子だけではなく,他の形質に関係する遺伝子も存在するため,性と関連を持って遺伝する伴性遺伝という現象が存在する。そのしくみについて学習する。
21 遺伝子の本体
遺伝子の本体がDNA(デオキシリボ核酸)であるという証拠と,それを確かめる研究の歴史について概説する。また,DNAの構造を学習する。
22 DNAとRNA
遺伝子の本体であるDNAは,生物の設計図という役割をもつ。DNAは複製され親から子へ受け継がれるとともに,DNAの遺伝情報をもとにタンパク質がつくられ,生物の多様な機能が発現する。その際活躍するRNAについて学習する。
23 中間試験
第16週から第22週までの内容について,中間試験を実施する。
24 中間試験解答 DNAの複製
DNAの複製の仕方(半保存的複製)と,細胞分裂周期とのかかわりについて学習する。
25 遺伝子の働き
酵素は,DNAにある遺伝子の働きで生成され,酵素反応によって生物の形質があらわれる。一遺伝子一酵素説を中心に,遺伝子と酵素の関係を学習する。
26 遺伝情報の転写と翻訳
遺伝情報はDNAからmRNAに転写され,さらにmRNAからtRNAによって翻訳されて,タンパク質が合成される。その過程について学習する。
27 転写の調節:スプライシング
真核生物と源核生物ではmRNA合成の方法に違いがあり,その1つが転写後に起こるスプライシングである。また転写にはさまざまな調節機構が働く。そのしくみを学習する。
28 転写の調節:オペロン説とDNA修復
転写調節機構において重要なオペロン説について概説する。また,DNAの遺伝子に変化が起こると,生物にとって有害なタンパク質が合成される危険性があるため,さまざまな修復機構が存在する。そのしくみについて解説する。
29 バイオテクノロジーと遺伝子組換え
近年,遺伝子や細胞について様々なことが明らかになるにつれて,それらを人為的に操作する技術が開発され,食品や医薬品の生産,品種改良などに飛躍的な進歩がもたらされている。このような生物関連の新しい技術であるバイオテクノロジーとその利用法について,遺伝子組み換え技術を中心として概説する。
30 生物個体の遺伝子操作とバイオテクノロジーの課題
バイオテクノロジーは,人間の基本的人権や生命そのもの,さらには生態系をも脅かす可能性のある技術である。クローン動物,トランスジェニク生物,遺伝子診断と遺伝子治療などに関して,その有用性と問題点について考える。


中間試験および定期試験を実施する.