【 2005 年度 授業概要】
科   目 流体工学 ( Fluids Engineering )
担当教員 赤対 秀明
対象学年等 機械工学科・4年C組・通年・必修・2単位
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
A4-2(100%) (d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g)
授業の概要
と方針
流体には気体と液体があるが、これらの流れは空気、水などのように身近に見られるだけでなく、工業上多くの工場や装置で様々な形での流体の流動が見られる。これらの装置の設計や運転に必要な流体の性質および流体の静力学と動力学を、SI単位と工学単位を併用して理解させる。



1 【A4-2】  流体の特徴を表す物性値を理解できる。
2 【A4-2】  流体の静力学を理解できる。
3 【A4-2】  完全流体の流れが理解できる。
4 【A4-2】  粘性流体の流れが理解できる。
5  
6  
7  
8  
9  
10  












1 密度、比重、比体積、比重量、粘度、動粘度など流体の物性値が理解できているか、前期中間試験で評価する。
2 圧力、絶対圧とゲージ圧、パスカルの原理、圧力計、浮力、表面張力など流体の静力学が理解できているか、前期中間試験で評価する。
3 連続の式、オイラーの運動方程式、ベルヌーイの定理など完全流体の流れが理解できているか、前期定期試験で評価する。
4 レイノルズ数、層流と乱流、摩擦圧力損失、管路の諸損失、境界層、はく離、抗力と揚力など粘性流体の流れが理解できているか、後期中間試験および後期定期試験で評価する。
5  
6  
7  
8  
9  
10  




到達目標1,2,3,4の中間試験と定期試験で80%、学習態度や課題レポートや小テストなどの平常点20%で評価する。ただし、出席状況の悪いものは不合格とする。
テキスト 「機械工学演習シリーズ1演習水力学」:国清・木本・長尾共著(森北出版)
参考書 「改定新版流体工学」:古屋・村上・山田共著(朝倉書店)
「新版流体の力学」:中山泰喜著(養賢堂)
関連科目  
履修上の
注意事項
数学、工業力学、応用物理の基礎知識が必要である。また、5年生の流体工学、流体力学、専攻科の流体計測、流れ学と関連している。

【授業計画( 流体工学 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 ガイダンスおよび流体工学に関する単位(国際単位と工学単位)
流体工学を学ぶにあたってのガイダンスを行う。また体積、質量、重量の関係を確認する。常に国際単位系(SI)と工学単位系を意識し、相互に変換できるようにする。
2 流体の性質(1) 密度、比重、比体積、比重量
密度、比重、比体積、比重量の概念を理解する。有効数字を理解する。
3 流体の性質(2) 粘度、動粘度
すべての流体は粘性を持っている。また流れている場合には、それを密度で除した動粘度が用いられる。ニュートンの粘性法則を理解し、それによる粘性力を算出できる。
4 流体の静力学(1) 圧力、絶対圧とゲージ圧
静止流体中の圧力は、密度、重力加速度、高さの積で表される。また、完全真空基準の絶対圧、大気圧基準のゲージ圧があり、前者は気体に、後者は液体に比較的多く用いられることを理解する。
5 流体の静力学(2) パスカルの原理
静止流体中の1点の圧力は全ての方向に等しく、また密閉容器内の圧力はすべての場所において等しい。このパスカルの原理(水圧機の原理に用いられる)を理解する。
6 流体の静力学(3) 圧力計
圧力を測定する方法として、液柱計(ピエゾメーター)、U字管マノメータ、差圧計、微圧計、ブルドン管、電気式圧力変換器などがあるが、これらの特徴を理解する。
7 流体の静力学(4) 浮力、表面張力
アルキメデスの原理により、物体はそれが排除した流体の重量分の力を鉛直上向きに受ける。この浮力を理解する。また毛細管現象に見られる表面張力を理解する。
8 前期中間試験
前期前半の知識を確認するために、中間試験を実施する。
9 中間試験問題の解答と解説、前半の復習
中間試験問題の解答と解説を行うと同時に、前半の復習を行う。
10 完全流体の流れ(1) 連続の式
質量保存の法則を流体の流れに適用したものが、連続の式である。各断面の体積流量、質量流量、重量流量が一定である。
11 完全流体の流れ(2) オイラーの運動方程式
粘性も持たない流体(完全流体と呼び実在しない)の運動方程式を導く。実在流体はすべて粘性を持っているが、式を簡略化するために、粘性を無視した運動方程式である。
12 完全流体の流れ(3) ベルヌーイの定理
オイラーの運動方程式を積分して解くと、ベルヌーイの定理になる。流体の圧力、位置、運動のエネルギーの和が一定であるというエネルギー保存の法則である。
13 完全流体の流れ(4) ベルヌーイの定理の応用1
ベルヌーイの定理を適用して、完全流体の流れの管路各部での圧力や速度を求める。演習を中心に行う。
14 完全流体の流れ(5) ベルヌーイの定理の応用2
ベルヌーイの定理を実用化するためには、粘性分を考慮して修正する必要がある。例えば、オリフィスなどの流量係数の概念を理解する。
15 完全流体の流れ(6) ベルヌーイの定理の応用3
速度を測るピトー管の原理を理解する。14回目と同様に、実在流体にあうように如何に修正するか理解する。
16 前期定期試験問題の解答と解説、前期授業内容の復習
前期定期試験問題の解答と解説を行うと同時に、前期の総復習を行う。特に、質量と重量、比重と密度、粘度と動粘度、流速と流量の違いについて確認すると共に、連続の式とベルヌーイの定理を活用できることが必要である。
17 粘性流体の内部流れ(1) 摩擦圧力損失、修正ベルヌーイの定理、層流と乱流
実在流体には粘性があり流動方向にエネルギーが失われ、摩擦圧力損失が生じることを理解する。これを表すのに修正ベルヌーイの定理が用いられる。摩擦圧力損失は、層流と乱流でその特性が異なる。それは、層流と乱流で、流体粒子の流れ方、速度分布などに違いがあるためであることを理解する。
18 粘性流体の内部流れ(2) 摩擦圧力損失の求め方、ムーディ線図
円管内の摩擦圧力損失はダルシーワイズバッハの式を用いて求めるが、そこに用いる管摩擦係数が層流と乱流で異なること、また乱流では内壁の相対粗さにより異なることを理解する。これらをまとめたムーディ線図を理解する。
19 粘性流体の内部流れ(3) 演習問題
ムーディ線図の読み方を理解する。その際、流体のもつ慣性力を粘性力で除したレイノルズ数を理解する。また、両対数グラフを理解する。
20 粘性流体の内部流れ(4) 円管以外の管における摩擦圧力損失の求め方
工業上、円管だけでなく長方形ダクトや管群のような複雑な断面形状をした管がある。その場合の摩擦圧力損失を求めるために、水力半径の概念を用いた等価直径の概念を理解する。
21 粘性流体の内部流れ(5) 管路流れの諸損失
流体は、直管部だけでなく、エルボ、バルブ、急拡大・急縮小、タンク入口出口などで損失を生じる。それらの総損失(全圧力損失)を算出できるようになる。
22 粘性流体の内部流れ(6) 演習問題、経済直径
総損失を求める演習問題を行う。また、設備固定費と動力費の兼ね合いできまる経済直径の概念を理解する。
23 後期中間試験
後期前半の知識を確認するために、中間試験を実施する。
24 中間試験問題の解答と解説および後期前半の復習
後期中間試験問題の解答と解説を行うと同時に、後期前半の復習を行う。
25 粘性流体の外部流れ(1) 境界層と剥離
流動中の物体のまわりには、粘性の影響で速度が小さくなった領域が存在する。これを境界層と呼ぶが、この境界層の構造を理解する。また、この境界層が物体から離れる現象(剥離)がどのように生じるか理解する。
26 粘性流体の外部流れ(2) 抗力と抗力係数
抗力には、圧力抗力と摩擦抗力があるが通常これらを合わせて抗力と呼ぶ。抗力は主流の動圧に比例するので、抗力を動圧と物体の代表面積の積で無次元化し、抗力係数を用いて整理する。
27 粘性流体の外部流れ(3) 球の抗力係数、カルマン渦列
抗力係数は物体の形状により様々である。ここでは一例として、球の抗力係数がレイノルズ数によって変化することを理解する。層流境界層から乱流境界層に変化する臨界レイノルズ数を境に抗力係数が約5倍変化する。これが、ボールに様々は影響を与える事例を紹介する。また物体の後方に生じるカルマン渦列を理解する。
28 粘性流体の外部流れ(4)演習問題
27回目の授業の演習問題を行う。物体の形状に応じて抗力係数を定められるようになる。特にレイノルズ数が1以下のストークスの法則に従う領域での、球の速度を求める方法を理解する。
29 粘性流体の外部流れ(5) 循環、マグナス効果、揚力と揚力係数
循環の概念を理解すると共に、揚力は循環と速度と密度の積で得られることを理解する。回転物の周りには循環が生じ、マグナス効果と呼ばれる揚力が発生するが、これがカーブなどボールが曲がる理由である。また揚力は主流の動圧に比例するので、揚力を動圧と物体の代表面積の積で無次元化し、揚力係数を用いて整理する。
30 粘性流体の外部流れ(6) 翼とその揚力係数、抗力係数
揚力を最大限に利用した翼の構造と各部名称を理解する。また、翼の揚力係数および抗力係数は、翼の迎え角の関数であり、各係数を定めて揚力を求めることできるようになる。


・前期中間試験を実施する。
・前期定期試験を実施する。
・後期中間試験を実施する。
・後期定期試験を実施する。