【 2005 年度 授業概要】
科   目 数値解析 ( Numerical Analysis )
担当教員 長野 勝利
対象学年等 電子工学科・4年・通年・必修・2単位
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
A3(100%) (c),(d)1
授業の概要
と方針
各種理工学理論を使用して設計されたものを現実のものとして実現するには,その理論に基づいた高度で柔軟な算法が必要である.ここでは,コンピュータによる科学技術計算の基礎となる理論を理解し,その理論を基にそれらの算法のアルゴリズムについて修得することを目的とする.併せて,問題解決のための定式化やその解法手順を検討する手法についても理解を深める.



1 【A3】  浮動小数点数と演算系による誤差の伝播について理解できる。
2 【A3】  代数方程式の性質と解の直接解法について理解できる。
3 【A3】  高次方程式の各種解法やそのアルゴリズムについて理解できる。
4 【A3】  連立方程式の各種解法やそのアルゴリズムについて理解できる。
5 【A3】  逆行列の算法や行列の固有値について理解できる。
6 【A3】  多項式近似について理解できる。
7 【A3】  代表的な数値微分、数値積分、微分方程式の数値解法の計算法について理解できる。
8 【A3】  問題解決のための定式化の手法について理解できる。
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1 浮動小数点数と演算系による誤差の伝播等について理解できているか定期試験、中間試験、理解度確認テストで評価する。
2 代数方程式の解の導出について理解できているか定期試験、中間試験、理解度確認テストで評価する。
3 二分法、Newton-Raphson法、組み立て除法、反復法等による高次方程式の解法について理解できているか定期試験、中間試験、理解度確認テストで評価する。
4 Gauss-Jordan法、Crout法、Cholesky法、Jacobi法、Gauss-Seidel等による連立方程式の解法やそれらのアルゴリズムについて理解できているか定期試験、中間試験、理解度確認テストで評価する。
5 行列の計算法や応用について、逆行列の計算法やアルゴリズムについて、また、固有値についてフレーム法やヤコビ法について理解できているか定期試験、中間試験、理解度確認テストで評価する。
6 Taylor級数による関数近似や最小二乗法、Newtonの補間、Lagrangeの補間などの多項式近似について、また、差分と補間多項式について理解できているか等を定期試験、中間試験、理解度確認テストで評価する。
7 補間による数値微分法、Newton-Cotes形の積分公式などについて、また、Taylor法、Euler法、Runge-Kutta法などの代表的な微分方程式の数値解法についてを定期試験、中間試験、理解度確認テストで評価する。
8 具体的な問題について、問題を分析して目的関数、制約条件などを定式化できるか、その制約条件を利用して目的関数を解く手順、手法について理解できているかを定期試験、中間試験、理解度確認テストで評価する。
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到達目標1〜8の定期試験(中間試験,理解度確認テストも参考にして)100%で評価する.ただし,受講状況(出席,ノート等)の悪いものは不合格とする.
テキスト 「数値計算」:片桐重延(東京電機大学出版局)
参考書 数値解析(サイエンス社)
数値解析の基礎(培風館)
関連科目  
履修上の
注意事項
関連科目:プログラミングII

【授業計画( 数値解析 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 数値計算における誤差と誤差の伝播
誤差は、現象を数学的に表現する場面、コンピュータで処理する場面、コンピュータから出力する場面など情報処理の各場面で起こる。近似計算では誤差の特性を良く知り、それを利用することが不可欠である。ここでは、誤差の発生と取扱いについて理解をする。
2 浮動小数点系における誤差
コンピュータで数を表示するときの方式とそのときの誤差の取り扱いほうほうについて理解する。また、コンピュータにおける数の内部表現と誤差の扱いについても理解する。
3 代数方程式の直接的解法
2次の代数方程式の解の公式は日常的に使用しており、4次までの代数方程式についてもCardanoやFerrariなどの直接的解法によって解を求めることができる。Cardanoの方法とFerrariの方法の導出を行ない、4次までの代数方程式の解法と公式の利用について理解する。
4 非線形方程式の解法
5次以上の代数方程式や一般の非線形方程式には直接的解法は存在しないので近似解法を用いなければならない。ここでは、代数方程式および一般の非線形方程式に利用できる方法として、2分法、Newton法について理解する。
5 多項式と組立除法
非線形方程式の解法であるNewton法の反復公式を用いる場合、高次の関数値や高次の関数の微分値を計算しなければならない。これを防ぐ方法として組み立て除法を用いる方法がある。この方法はExcelの使用に馴染む手法でもある。これらについて理解する。
6 反復法による方程式の解法
方程式 f(x)=0 を変形して x=g(x) の形に直し、この関数を Xn+1=g(Xn) の再起式としてXnを求める手法を反復法という。ここでは、この基本的な特性について調べ、発展的なことがらについても学習する。
7 行列の計算法
行列の計算は、社会の情報化とコンピュータの進歩に伴い、多量な情報を系統的に扱うようになって急速に利用価値が増大した。ここでは、行列の性質および計算法、応用について復習する。
8 中間試験
中間試験を実施する。
9 連立方程式の解法(1)
連立1次方程式の解は理論的にCramerの公式により求められるが、これには多くの積和計算を要しあまり実用的ではない。ここでは、連立1次方程式の解法として代表的なGauss-Jordan法のアルゴリズムについて理解する。
10 LU分解
LU分解とは、対角要素より上のすべての要素の値を零とする行列を下三角行列(L)とし、対角要素より下のすべての要素の値を零とする行列を上三角行列(U)として、行列をこの二つの三角行列の積LUに分解することである。ここではLU分解の計算法について理解する。
11 LU分解と連立方程式
連立1次方程式の解を係数行列を二つの三角行列の積にLU分解して求める方法について学習する。ここでは、求める三角行列の最終的な値が簡単に求められるCrout法と係数行列が正値対称行列の場合に用いられるCholesky法について理解する。
12 逆行列の算法
行列の逆行列を行列の余因子を用いて求める解析的な方法について復習する。ただし、この方法は元の行列の小行列を総て計算することから計算回数が激増し実用的ではない。ここでは、単位行列と連立方程式の解法のGauss-Jordan法を用いる方法のアルゴリズムについて理解する。
13 固有値問題の解法
工学の分野、中でも構造工学の領域においてしばしば現われる固有値問題について、まず、計算の基礎として固有値および固有ベクトルの概念と諸性質について学習する。また、固有値問題の解法としてフレーム法とヤコビ法について理解する。
14 連立方程式の解法(2)
与えられた連立方程式に対して適当な初期ベクトルを与えて真の解に収束させる方法で連立方程式を解く反復法について学習する。ここでは、Jacobi法とその改良形のGauss-Seidel法について理解する。また、制約条件のある不定方程式の解法など連立方程式の応用についても学習する。
15 演習
前期期間に行なった授業内容のまとめと演習を行なう。
16 関数計算と関数近似
コンピュータのライブラリ関数は、その殆どがTaylor級数、Chebyshev級数等の収束級数を利用したプログラムによって計算されている。これに対して実験データのように離散的な数値からは簡単な近似関数を得る必要が生じてくる。ここでは、関数の近似値を多項式で表現するTaylor級数及び関数近似の基本的な考え方として
17 多項式の計算
三角関数などの関数をxの多項式に展開して、その多項式を用いてxのある値について関数の近似値を求める。その際、計算過程を簡単にし、誤差をなるべく少なくすることについて学習する。
18 Newtonの補間多項式
補間法は数値計算法の基礎となるもので、与えられた数個の点とその関数値から、求めようとする点の関数値を計算するものである。あるいは、離散的な数値列から近似関数を求めることでもある。ここでは、多項式近似として良く知られているNewtonの補間多項式の導出について理解する。
19 差分と補間多項式
多項式近似に良く使用されるNewtonの補間多項式の係数は、結局、計算の簡単な差分表から求められることを理解する。
20 Lagrangeの補間多項式
互いに異なる n+1個の点とこれに対応する関数値が与えられているとき、与えられた n+1個の点を通るn次多項式(Lagrangeの補間多項式)はただ一つである。Lagrangeの補間多項式は差分商の考え方を用いて導かれたもので、本質的にはNewtonの補間多項式と同じといえる。ここでは、Lagrangeの補間多項式について理解する。
21 その他の方法と近似多項式
現在、補間法は曲線動作の制御や作図、コンピュータグラフィックスなどに用いられている。また、補間公式は数値積分公式や微分公式を得るための基本の式としても重要である。ここでは、Newtonの補間、Lagrangeの補間以外のHermiteの補間法、Spline関数による補間などについて学習する。
22 演習
後期中間までの期間に行なった授業内容のまとめと演習を行なう。
23 中間試験
中間試験を実施する。
24 数値微分
数値微分は、関数値が離散的にしか与えられていないときや微分が複雑で難しい場合などに用いられる。数値微分の方法には、差分演算子より微分公式を求める古典的な方法があるが、ここでは補間公式を微分する方法を取り上げる。また、差分商列を用いて微分値を差分商列の補間により求める新しい方法についても学習する。
25 数値積分
不定積分はその解が関数であり、定積分は数値でコンピュータによる数多くの計算法が考案されている。数値積分は微分方程式の数値解を求めるのみならず、解析的に積分不可能な積分や離散的なデータを基にした積分を行うときに用いる。ここでは、Newtonの前進公式を積分することによりNewton-Cotes形の積分公式を求める。
26 モデル化と微分方程式
情報化が進む現代では、ものの変化を微分方程式で表してそれを数値的に解くことが必要な場合が多い。ここでは、現実の問題から微分方程式を作り、それを解く方法について考察する。
27 微分方程式の初期値問題
具体的な問題から作られた微分方程式には解析的に解けないものが多く、解析的に解ける場合でも解が級数、特殊関数の形になっていて具体的な値を知ることが困難なことがある。近似の誤差をできるだけ抑えることに考慮して直接数値的に解く方法がある。ここでは、微分方程式の数値解法の代表的なものについて学習する。
28 Runge-Kutta法
微分方程式の代表的な数値解法であるRunge-Kutta法は高い制度をもつように、また、n個の関数の値を計算することによって微分値の計算を行わなくてよいように工夫された手法である。ここでは、Runge-Kutta法の導出を行い、その応用について理解する。また、微分方程式の応用についても考察する。
29 問題解決のための定式化
問題解決のための定式化の手法について理解する。具体的な問題について、問題を分析して定式化し問題を解き、問題解決のために利用した手法、結果等について考察する。
30 演習
後期期末までの期間に行なった授業内容のまとめと演習を行なう。


・中間試験を実施する(適宜行う理解度確認テストを中間試験に代える場合もある)。
・定期試験を実施する。