【 2005 年度 授業概要】
科   目 電子回路I ( Electronic Circuit I )
担当教員 三好 誠司
対象学年等 電子工学科・4年・通年・必修・2単位
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
A4-1(100%) (d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g)
授業の概要
と方針
エレクトロニクスの技術革新は広範かつ急速である。しかし基礎となるべきことを十分理解しておくことにより、新しい素子・回路・技術に対処することが可能である。本教科では電子回路の基本的な考え方と設計手法を身につけさせる。授業においては講義に加えて演習にも重点を置く。



1 【A4-1】  トランジスタとFETの等価回路が理解できる。
2 【A4-1】  直流等価回路と交流等価回路が理解できる。
3 【A4-1】  簡易計算によるバイアス回路の設計ができる。
4 【A4-1】  基本増幅回路が理解できる。
5 【A4-1】  トランジスタの高周波等価回路が理解できる。
6 【A4-1】  負帰還の目的と効果が理解できる。
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1 トランジスタやFETの等価回路について理解できているかを中間試験または定期試験で評価する。
2 直流等価回路や交流等価回路について理解できているかを中間試験または定期試験で評価する。
3 理想トランジスタを用いた簡易計算によりバイアス回路の設計ができるかを中間試験または定期試験で評価する。
4 トランジスタやFETの基本増幅回路が理解できているかを中間試験または定期試験で評価する。
5 トランジスタの高周波等価回路が理解できているかを中間試験または定期試験で評価する。
6 負帰還の目的と効果が理解できているかを中間試験または定期試験で評価する。
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到達目標1〜6に関して中間試験と定期試験を100%で評価する。
テキスト 「アナログ電子回路」藤井信生(昭晃堂)
参考書  
関連科目  
履修上の
注意事項
電気回路I,電気回路II,電子デバイスの内容を修得していることを前提とする。

【授業計画( 電子回路I )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 電子回路という科目の位置づけと導入,電源
電子回路では能動素子を含む回路を扱う.そのため等価回路と適切な近似が重要となる.また,周波数に対する感覚や素子の常識的な値を身につけることも重要である.電源は独立電源と制御電源に大別され,独立電源は電圧源と電流源に分類される.電源から取り出せる最大電力のことを有能電力と呼ぶ.
2 重ねの理,テブナンの定理
多数の電源を含む線形回路の電圧または電流は個々の電源が単独に存在している場合の電圧または電流の和である.これを重ねの理と呼ぶ.また,線形回路中のあるインピーダンスを流れる電流を求める際に便利な法則にテブナンの定理がある.
3 電力比,電圧比,電流比の表し方
電子回路では電圧や電流の比を表すためにデシベル[dB]という単位を用いる.デシベルは対数を用いる方法である,広い範囲の数値を効率よく表すことができる.
4 RC回路の周波数特性
コンデンサやコイルなどを含む回路では,一般に回路中の電圧や電流は周波数によってその大きさと位相角が変化する.このような場合,回路中の任意の二つの電圧の比,または電流の比もまた周波数の関数となる.
5 半導体中のキャリアの移動
半導体は真性半導体と不純物半導体に大別される.不純物半導体にはn形半導体とp形半導体がある.また,半導体中のキャリア(荷電粒子)の移動には電界によるものと拡散によるものの2種類がある.
6 pn接合とダイオード
p形半導体とn形半導体を接合するとキャリアが再結合により消滅した空乏層が形成される.また,このときp形半導体に正の電圧を印加することを順方向バイアス,負の電圧を印加することを逆方向バイアスと呼び,順方向バイアスでは電流が流れやすく,逆方向バイアスでは電流がほとんど流れない.
7 バイポーラトランジスタの動作と静特性
p形-n形-p形あるいは逆に形成し,それぞれの領域に端子を取り付けた3端子素子をトランジスタと呼ぶ.トランジスタの3端子はエミッタ,コレクタ,ベースと呼ばれる.コレクタの電流はコレクタの電圧には無関係でエミッタの電流だけで決定される.また,トランジスタは増幅作用を持つ.
8 中間試験
 
9 中間試験の返却と解説,FETの動作と静特性
pn接合の空乏層の幅が電圧によって変化することを利用して,電流を制御する素子をFETと呼ぶ.FETには接合形,MOS形があり,増幅作用を持つ.
10 トランジスタの等価回路,FETの等価回路
トランジスタやFETなどの能動素子については回路計算のためにこれらを適切な等価回路で表現することが必要となる.等価回路としてはベース接地トランジスタの交流等価回路,エミッタ接地トランジスタの交流等価回路,h-パラメータによる等価回路などがある.
11 直流と交流の分離
直流バイアス電圧,電流に比較して,振幅が十分小さい信号電圧,電流を増幅する回路を小信号増幅器と呼ぶ.小信号増幅器では直流バイアス電圧,電流と信号電圧,電流を分けて計算することができる.
12 トランジスタのバイアス回路
トランジスタに直流バイアス電圧,電流を与える回路には,簡易バイアス回路や電流帰還バイアス回路がある.バイアス回路の設計においては温度変化に対する安定度が重要となる.
13 バイアス回路の簡易計算と温度補償
トランジスタの特性を理想化することでバイアス回路の設計が非常に容易になる.理想化されたトランジスタはナレータとノレータという二種類の仮想的な素子で構成される.
14 FETのバイアス回路
トランジスタのバイアス回路設計と異なり,FETのバイアス回路設計においてはFETの特性曲線を使用する必要がある.
15 増幅器の特性を表す諸量
増幅器は一般に四端子回路として表すことができる.増幅器の特性を表すために入力インピーダンス,電圧利得,電流利得,電力利得,出力インピーダンスなどが用いられる.
16 16 定期試験の返却と解説,トランジスタ基本増幅回路(前半)
トランジスタ基本増幅回路にはベース接地,エミッタ接地,コレクタ接地の3種類の接地形式がある.
17 トランジスタ基本増幅回路(後半)
ベース接地は低入力インピーダンス,高出力インピーダンスであり電流増幅器であると言える.エミッタ接地はもっとも電力利得が大きくよく使用される.コレクタ接地は高入力インピーダンス,低出力インピーダンスでありバッファとして使用される.
18 18 FET基本増幅回路
FET基本増幅回路にはゲート接地,ソース接地,ドレイン接地の3種類があり,それぞれトランジスタ基本増幅回路のベース接地,エミッタ接地,コレクタ接地に対応する.
19 基本増幅回路の縦続接続
単独の基本増幅回路だけでは要求された特性が実現できない場合は,複数の基本増幅回路を組み合わせて増幅器を作る.増幅回路同士をコンデンサを介して結合する形式をRC結合増幅回路と呼ぶ.
20 トランジスタの高周波等価回路(前半)
トランジスタは真性トランジスタとそれに寄生する素子に分けて考えることができる.高周波においては真性トランジスタの電流増幅率は小さくなる.
21 トランジスタの高周波等価回路(後半)とFETの高周波等価回路
トランジスタの高周波等価回路には高周波T形等価回路やエミッタ接地高周波ハイブリッドπ形等価回路などがある.FETの場合は高周波における特別な等価回路を導入する必要はなく,電極間容量を考慮すればよい.
22 ミラー効果を考慮した小信号増幅器の周波数特性
増幅器の入出力間の容量が実際よりも大きく見える現象をミラー効果と呼ぶ.増幅器の周波数特性において,低域遮断周波数から広域遮断周波数までを帯域幅と呼ぶ.
23 中間試験
 
24 中間試験の返却と解説,多段増幅器の周波数特性
トランジスタを複数個用いて,増幅器を縦続接続した場合,全体の利得は各段相互の影響を考慮して求める必要がある.また,異常発振に注意する必要がある.
25 広帯域増幅回路
増幅器の広域遮断周波数を拡大するためには,コイルと次段の容量の共振現象を利用して利得の低下を抑える手法が有効である.これをピーキングと呼ぶ.ピーキングには直列ピーキングと並列ピーキングがある.
26 負帰還の原理,効果,種類
特性が多少不完全ではあるが大きな利得を有する増幅器と,特性の優れた減衰器を組み合わせて温度変化などに対する全体の特性を改善する技術として負帰還がある.
27 負帰還による入出力インピーダンスの変化
負帰還には直列−直列帰還,並列−並列帰還,直列−並列帰還,並列−直列帰還がある.入出力インピーダンスは直列接続の場合は増大し,並列接続の場合には減少する.
28 負帰還回路の実際(前半)
エミッタ接地基本増幅回路からバイパスコンデンサを除去すると直列―直列帰還をかけたことになる.この場合の入出力インピーダンスや利得を計算する.
29 負帰還回路の実際(後半)
並列−並列帰還を例としてとりあげ入出力インピーダンスや利得を計算する.
30 負帰還回路の安定性と位相補償
負帰還回路において位相が180度回転する周波数で開ループ利得が1以上であると発振する.これを避けるため位相補償という方法がある.


中間試験を実施する.
定期試験を実施する.