科 目 | 応用数学 ( Applied Mathematics ) | |||
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担当教員 | 松田 忠重,薮 忠司 | |||
対象学年等 | 電子工学科・4年・通年・必修・4単位 | |||
学習・教育 目標 |
工学系複合プログラム | JABEE基準1(1) | ||
A1(100%) | (c),(d)1 | |||
授業の概要 と方針 |
ベクトル解析と複素関数論の分野を薮が,ラプラス変換とフーリエ変換の分野を松田が担当。専門各科目で必要とされる数理的な内容・手法に対応できるよう「ベクトル関数」、「複素関数」、「ラプラス変換」、「フーリエ変換」の基礎的事項を学習する。内容が極めて豊富であり授業のペースを早めざるを得ないが,できるだけ演習の時間を設けて,理解を助けるようにしたい。 | |||
到 達 目 標 |
1 | 【A1】 空間曲線と曲面の形や性質をベクトルを用いて表現することができる。 | 2 | 【A1】 与えられたベクトル場,あるいはスカラー場に対して,勾配・発散・回転を計算できるとともに,その物理的意味・幾何学的意味を概ね理解できる。 | 3 | 【A1】 線積分と面積分の意味が理解でき,発散定理とストークスの定理の使い方がわかる。 それにより,これらの定理を使って,ベクトル関数の積分をより容易に求めることができる。 | 4 | 【A1】 コーシーの定理,コーシーの積分表示を簡単な複素関数の積分に適用できる。 | 5 | 【A1】 留数の意味を理解し,その性質を使って実数関数の無限積分等の特殊な積分を求めることができる。 | 6 | 【A1】 単純な波形のラプラス変換が計算できる,ラプラス変換の基本的性質を説明できる。 | 7 | 【A1】 簡単なたたみこみ計算ができる。 | 8 | 【A1】 ラプラス変換を使って簡単な常微分方程式が解け,ラプラス変換を使って簡単な系の伝達関数の説明ができる。 | 9 | 【A1】 単純な波形をフーリエ級数に展開でき,フーリエ級数の基本的性質が説明できる。 | 10 | 【A1】 単純な波形を複素フーリエ級数に展開できる。フーリエ変換できる。 |
評 価 方 法 と 基 準 |
到 達 目 標 毎 |
1 | 具体的な位置ベクトルで示された空間曲線や曲面に対して,曲線の長さや単位接線ベクトル,単位法線ベクトルを正しく求められるかどうかを,演習および前期中間試験で評価する。 | |
2 | 与えられたスカラー場,あるいはベクトル場に対して,勾配・発散・回転を正しく求められるかどうかを演習および前期定期試験によって評価する。 | |||
3 | 簡単な場の問題に対して,ガウスの発散定理とストークスの定理を正しく適用できるかどうかを,演習および前期定期試験で評価する。 | |||
4 | さまざまな関数の積分問題に対して,コーシーの定理とコーシーの積分表示の使い分けができているか,コーシーの積分表示を正しく使っているか,を演習および後期中間試験で評価する。 | |||
5 | 簡単な複素積分を留数を使って求めることができるか,さらには実関数の無限積分を求めることができるかを,授業中の演習および後期定期試験で確認・評価する。 | |||
6 | 単純な波形のラプラス変換が計算できる,ラプラス変換の基本的性質を説明できることを前期中間試験と授業内の演習で評価する。 | |||
7 | 簡単なたたみこみ計算ができることを前期定期試験と授業内の演習で評価する。 | |||
8 | ラプラス変換を使って簡単な常微分方程式が解け,ラプラス変換を使って簡単な系の伝達関数の説明ができることを前期定期試験と授業内の演習で評価する。 | |||
9 | 単純な波形をフーリエ級数に展開でき,フーリエ級数の基本的性質が説明できることを後期中間試験と授業内の演習で、フーリエ級数で合成できることをレポートで評価する。 | |||
10 | 単純な波形を複素フーリエ級数に展開でき,フーリエ変換できることを後期定期試験と授業内の演習で評価する。 | |||
総 合 評 価 |
評価は薮の評価と松田の評価で平均し,四捨五入する。薮は試験成績70%,演習30%の割合で評価する。松田は試験成績70%、レポートおよび授業中の演習30%の割合で評価を行う。 | |||
テキスト | 「応用数学」:田河生長他著(大日本図書) |
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参考書 | 「基礎解析学コース−ベクトル解析」:矢野健太郎・石原繁共著(裳華房) 「基礎解析学コース−複素解析」:矢野健太郎・石原繁共著(裳華房) 「基礎解析学」:矢野健太郎・石原繁共著(裳華房) 「基礎電気数学」:卯本重郎著(オーム社) 「やさしいフーリエ変換」:松尾博著(森北出版社) |
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関連科目 | ||||
履修上の 注意事項 |
2,3学年での数学をよく理解できていることが大切である.特に微分積分学,三角関数,指数関数,対数関数をよく理解しておいて欲しい。 授業の進捗のペースが早いので,予習・復習に努め,その都度授業内容を理解するよう心がけてほしい。 電磁気学をはじめ専門基礎数学の一部となるのでよく理解して学んで欲しい. |
週 | 上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など) |
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1 | ベクトルとスカラー,ベクトルの基本 |
ベクトルとスカラーの定義,ベクトルの成分表示と基本的な演算法則について説明する. | |
2 | スカラー積とベクトル積(1) |
ベクトルのスカラー積(内積)とベクトル積(外積)の定義と物理的意味,スカラー積の諸性質について解説する. | |
3 | ベクトル積(2) |
ベクトル積の成分表示,ベクトル積の諸性質を解説するとともに,具体的な計算例を示す. | |
4 | ベクトル関数とその微分 |
ベクトル関数の定義を示し,その極限と連続性,微分の概念について解説する. また,実際の微分例を示す. | |
5 | 空間曲線とベクトル |
空間曲線が位置ベクトルを使って表せること,弧長や接線ベクトルがベクトルを使うことによって容易に求められることを示す. | |
6 | 速度・加速度 |
ベクトル関数の微分の物理的な意味として,速度と加速度を考える. ベクトル関数を微分することによって,これらの物理量を求めるための手順を示す. | |
7 | 曲面とベクトル |
空間曲面が2変数のベクトル関数で表現されることを示し,曲面に対する単位法線ベクトルを導く. | |
8 | 中間試験 |
9 | 中間試験解答,スカラー場とベクトル場 |
中間試験の解答を行うとともに,スカラー場とベクトル場の定義,具体的な例を示す. | |
10 | スカラー場の勾配 |
スカラー場φに対して,それをx, y, z で偏微分したものを成分とするベクトルとして,スカラー場の勾配を定義する. 勾配の求め方,物理的意味,勾配の公式を解説する. また,位置ベクトルの大きさ r の各種関数に対して勾配を求める方法を練習する. | |
11 | ベクトル場の発散と回転 |
ベクトル場に対して発散というスカラー量と,回転というベクトル量を定義して示し,それらの物理的意味を説明する. また,発散と回転に関する公式を示す. | |
12 | 線積分とグリーンの定理 |
スカラー場とベクトル場の線積分の定義と,媒介変数 t の積分に変換してそれらの値を求める方法を示す. また,線積分から領域積分への変換式を与えるグリーンの定理について,その証明と具体的な応用例を示す. | |
13 | 面積分 |
スカラー場とベクトル場の面積分を定義し,それらを具体的に求める手順を示す. | |
14 | ガウスの発散定理 |
ガウスの発散定理の物理的意味,証明の手順を解説するとともに,その定理の極めて有効な適用事例を紹介する. | |
15 | ストークスの定理 |
ストークスの定理の証明の考え方を示すとともに,この定理の有効な適用事例を示す. | |
16 | 複素数の基礎 |
複素数に対する基本的な諸量の定義,演算法,複素平面による表記法を示す. | |
17 | 極形式 |
複素数をその絶対値と偏角を使って表す極形式と呼ばれる表示法を説明する.極形式を用いると,複素数の乗除,および累乗,累乗根の計算が容易に行えることを示す. | |
18 | 複素関数とその微分 |
複素関数を定義し,その極限,連続性,微分という一連の流れを示す. 複素関数の微分法は表面的には実数の場合と同じであることを理解させる. | |
19 | 正則関数の基本 |
正則関数の意味を示し,複素関数が正則関数であるための必要十分条件を与えるコーシーリーマンの関係式を導く. また,与えられた関数が正則であるかどうかをコーシーリーマンの関係式を使って判定する. | |
20 | 指数関数と三角関数 |
基本的な複素関数である指数関数と三角関数を定義し,それらの正則性を確かめるとともに,それらの基本的な性質について解説する. | |
21 | 正則関数による写像(等角写像) |
複素変数 z の変化に対する w = f (z) の変化をz→wへの写像である,と考えたときに,それが等角性を有していることを示し,簡単な関数によってその性質を確認する. | |
22 | 複素積分の定義と性質 |
z平面(複素変数zの動きを示す平面)内の曲線に沿う複素積分を定義し,その基本的性質を示す. | |
23 | 中間試験 |
24 | 中間試験の解答,基本的な複素積分計算 |
中間試験の解答を示すとともに,授業の後半で,積分路が媒介変数 t の関数として与えられるような基本的な複素積分の計算法を示す. | |
25 | コーシーの定理 |
複素関数論における基本的で,かつ重要な定理であるコーシーの定理が,複素積分の定義式にグリーンの定理とコーシーリーマンの関係式を適用することによって導かれることを示す. また,その拡張形として,単一閉曲線の中に複数個の単一閉曲線がある場合にコーシーの定理を適用して得られる公式を導く. | |
26 | コーシーの積分表示 |
単一閉曲線の内部で複素関数 f(z) が正則であるとき,その内部の一点αにおける複素関数の値 f (α) ,あるいはその微分形が,コーシーの積分表示と呼ばれる積分形の式で与えられることを導く. また,それを複素積分の計算に適用できることを示す. | |
27 | 数列と級数,テイラー展開 |
複素数に対して数列と級数を定義し,その収束性を論じる. 正則関数については,実数の場合と同じ形のべき級数に展開できる(テイラー展開)ことを示す. | |
28 | 孤立特異点とローラン展開 |
孤立特異点を定義し,その近傍で関数を級数展開する(ローラン展開)と,負のべき乗項を伴うことを示す. ローラン展開を求める具体的な方法を示す. | |
29 | 留数の定義と留数の計算 |
孤立特異点αを内部に含む単一閉曲線まわりの f(z) の積分を2πi で除したものを留数と定義し,それがローラン展開における1/(z-α)の係数に等しいことを導く. これから特異点を内部に含む閉曲線まわりの積分が留数を使って求められることを示す. | |
30 | 留数定理とその応用 |
留数の拡張形として留数定理が容易に導かれること,また留数定理を用いれば具体的な実積分問題,特に無限積分問題が比較的容易に解けることを示す. | |
31 | ラプラス変換の定義 |
(実数から実数へまたは複素数から複素数へ,関数から関数への変換があるが)変換とはどのようなものか,次にラプラス変換とはどのようなものか学ぶ,定義を学ぶ. | |
32 | ラプラス変換の例 |
ラプラス変換をいくつかの例で実際行う.学生は,部分積分の計算,極限における計算ができる必要があることに注意.(また,この時点では複素微分,複素積分をまだ学んでいないことにも注意して授業すること.) | |
33 | 例題問題 |
教科書の例題,問題を使ってラプラス変換を行う. | |
34 | 演習,小テスト |
ラプラス変換を演習形式で行う.小テストする. | |
35 | 基本的性質,例題問題 |
ラプラス変換に関する線形性,原関数の原点移動,像関数の原点移動の性質を学ぶ. | |
36 | 基本的性質,例題問題 |
原関数の微分積分のラプラス変換に関する性質を学ぶ.例として簡単なR,Cの電気回路の微分方程式のラプラス変換を行う. | |
37 | 演習 |
ここまでのラプラス変換の授業内容を演習で行う. | |
38 | 中間試験 |
30回目から37回目までが試験範囲.どのような方法を用いてもよいので,簡単な関数のラプラス変換ができることを評価する.基本的なラプラス変換の性質が理解できていることを評価する. | |
39 | 中間試験問題解答解説,たたみこみ,例題問題 |
中間試験問題の解答と解説する.たたみこみとは何か学ぶ,たたみこみの定義とそのラプラス変換を学ぶ.例題問題する. | |
40 | 逆ラプラス変換 |
ラプラス像関数から原関数を求める(変換表の像関数にあるような部分分数にして原関数を求める)方法を学ぶ. | |
41 | 例題問題 |
ラプラス像関数から原関数を求める.たたみこみをその定義の積分から求める方法とラプラス変換,逆変換で求める方法を学ぶ. | |
42 | 演習 |
学生は演習で次を行う.ラプラス像関数から原関数を求める.たたみこみをその定義の積分から求める方法とラプラス変換,逆変換で求める. | |
43 | 常微分方程式解法への応用,例題問題 |
常微分方程式をラプラス変換すると未知関数の像関数は代数で求まることを学ぶ.未知関数は,その結果を逆ラプラス変換することより求まることを学ぶ. | |
44 | デルタ関数と系の伝達関数,例題問題 |
デルタ関数について学ぶ.インパルス応答と伝達関数を学ぶ.微分方程式の解のうち外力による項は,外力とインパルス応答とのたたみこみであることを学ぶ. | |
45 | 演習 |
教科書内外の常微分方程式の問題をラプラス変換を用いて解く. | |
46 | 前期定期試験問題解答解説,フーリエ級数の定義 |
前期定期試験問題の解答と解説する.フーリエ変換とはどのようなものか学ぶ,フーリエ級数の定義を学ぶ. | |
47 | フーリエ級数展開の例 |
簡単な例(矩形波)でフーリエ係数を求め,それでフーリエ合成を近似して黒板にグラフ表示して見せる. | |
48 | フーリエ級数展開と合成の例,レポート課題 |
簡単な例でフーリエ係数を求め,それでフーリエ合成を近似して黒板にグラフ表示して見せる.その級数はフリーソフトを使ってパソコンで簡単に近似合成できるのでそれをレポート課題とする. | |
49 | フーリエ級数の性質 |
レポート課題解説する.原関数が偶関数の場合,奇関数の場合のフーリエ級数,原関数の導関数のフーリエ級数を学ぶ.例を用いてそのフーリエ級数を求める. | |
50 | 例題問題,演習,レポート課題 |
その他の簡単な例でフーリエ係数を求める.その級数はフリーソフトを使ってパソコンで簡単に近似合成できるのでそれらのいくつかを2番目のレポート課題とする. | |
51 | フーリエ級数の性質 |
レポート課題の解説をする.フーリエ級数の収束について紹介.ある種の級数が原関数とフーリエ級数の関係から求まることを学ぶ.パーセバルの定理を学ぶ.時間軸周波数軸でのエネルギー密度の分布の関係を学ぶ.スペクトラムとは何か学ぶ.歪み率について学ぶ. | |
52 | 演習 |
ここまでのフーリエ級数の内容で演習をする. | |
53 | 中間試験 |
46回目から52回目までが試験範囲.簡単な関数のフーリエ級数を求めることができるか,またある種の級数が原関数とフーリエ級数の関係から求めることができるか試験で評価する.パーセバルの定理,歪み率が理解されているか試験で評価する. | |
54 | 中間試験問題解説,複素フーリエ級数 |
中間試験問題解説をする.複素フーリエ級数の定義を学ぶ.簡単な例を複素フーリエ級数に展開する. | |
55 | 例題問題 |
簡単な例を複素フーリエ級数に展開する. | |
56 | 演習 |
簡単な教科書内外の問題を使って複素フーリエ級数に展開する. | |
57 | 偏微分方程式解法への応用 |
フーリエ級数で偏微分方程式(熱伝導方程式)を解く方法を学ぶ. | |
58 | フーリエ変換 |
フーリエ変換定義を学び,逆フーリエ変換が成立することを紹介する. | |
59 | フーリエ変換の例と性質 |
簡単な例でフーリエ変換を行う,2,3のフーリエ変換の性質(移動則,微分則)について学ぶ. | |
60 | 演習 |
教科書内外の問題でフーリエ変換を行う. | |
備 考 |
・中間試験を実施する. ・定期試験を実施する. |