【 2005 年度 授業概要】
科   目 応用化学実験III ( Laboratory Work III in Applied Chemistry )
担当教員 杉 廣志,平池 邦夫,松井 哲冶,大淵 真一,九鬼 導隆,芝崎 誠司
対象学年等 応用化学科・4年・通年・必修・5単位
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
C1(70%) C4(30%) (d)2-b,(d)2-d,(e),(f),(h)
授業の概要
と方針
座学の内容にそって化学工学、分析化学、生物工学の各実験に取り組む。



1 【C4】  生物工学、生化学分野で用いられる基礎的実験手法を習得する。
2 【C1】  微生物細胞の取り扱い方や簡単な組換えDNA技術を習得する。
3 【C1】  各種分析装置の測定原理、測定データの解析法を理解し、機器操作法を習得する。
4 【C1】  化学工学の基本である流動および伝熱について理解を深めるとともに、データ整理法の1つである次元解析の手法を習得する。
5 【C4】  代表的な拡散分離操作である蒸留と抽出装置を運転し、装置効率が算出できる。
6 【C1】  機械的単位操作の基本である粒径分布の測定法を習得する。
7 【C1】  気液平衡の理解とその応用である単蒸溜操作の修得と物質収支の適応ができる。
8  
9  
10  












1 主に実験レポートより、培地の調製、植菌、培養結果や観察結果、定量分析の結果を判断し、基礎技術が習得できているかどうかを評価する。
2 主に実験レポートより、DNAの抽出、大腸菌の形質転換、電気泳動の結果、制限酵素地図を判断し、基礎技術が習得できているかどうかを評価する。
3 測定原理の理解、測定データの解析法の理解をレポートで評価する。実験に対する取り組み姿勢および意欲を実験中に評価する。
4 流動層と固定層の違い、流量測定の原理、輻射加熱の原理の理解、熱交換機の伝熱係数の算出法、蒸発装置の物質収支の立て方、液滴生成時の次元解析の手法の理解が出来ているか主に実験レポートで評価。
5 蒸溜塔の理論段数をマッケーブシール法で算出できるか、向流多段抽出の理論段数の作図解ができるかを主に実験レポートで評価。
6 粒径分布の代表的測定法である篩分け法、アンドレアセンピペットを用いた方法で粒径分布が測定出来るか実験操作中に評価し、データを纏めることができるかをレポートで評価する。
7 気液平衡の理解とその応用である単蒸溜操作の修得とレイリー式の適用による収支計算が出来るかを主にレポートで評価する。
8  
9  
10  




レポート内容70%、実験操作等30%で評価する。
テキスト 「化学工学実験」:東畑平一郎ら(産業図書)
「新生物化学実験のてびき1、2」:下西庚嗣ら(化学同人)
プリント
参考書 「有機化合物のスペクトルによる同定法(第6版)」:荒木峻也他(東京化学同人)
関連科目  
履修上の
注意事項
化学工学、分析化学、生物工学の各テーマの原理についての理解が必要。

【授業計画( 応用化学実験III )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 実験全体のガイダンスおよび班分け
実験全体のガイダンスおよび班分け、実験上の注意事項の説明。
2 化学工学実験(前期)の説明、準備
化学工学実験室の使い方と前期6テーマの内容説明。
3 充填層と流動層
ガラス玉を充填物とした固液充填塔を用いて、流体の流動条件による圧損失および空隙率の変化の測定。粒子群の流動開始速度を実験より決定する。
4 減圧蒸発実験
減圧蒸発装置を使用して、蒸発過程を観察し、その物質収支について理解を深める。
5 蒸留塔の段効率
泡鐘式回分精留塔を用いて、全還流での精留をおこない、マッケーブーシール法から理論段数を求め精留に関する理解を深める。
6 粉砕、粒度分布の測定
海砂をボールミルで粉砕し、その経時変化による粒度分布を測定し、粉砕過程を理解する。粒度分布の測定には10個の篩を用いる。結果の処理は頻度曲線を用いてあらわす。実験での測定粒子径は80〜1000μmである。
7 メタノール〜水系の気液平衡関係の測定 
気液平衡曲線を求めるのには、気液平衡値(x,y)を10点くらい求める必要がある。ここでは適当な4点の気液平衡値からラージ(X,Y)線図法により残る6点を推算し、スモール(x,y)値に変換する。実測値の4点と、推算値の6点の10点よりx−y線図を作図する簡易平衡値推算法を理解する。
8  メタノール〜水系の単蒸留実験
授業で習った単蒸留を実際におこない、その得た結果を用いてレイリーの式に基づき解析を行い、単蒸留を理解する。とくに単蒸留の基本式であるレイリーの式の導出の説明を行い理解を深め、実験結果とレイリーの式による算出との比較検討を行う。
9 分析化学実験の説明、準備
実験内容の原理や操作法の説明と実験準備。
10 赤外線吸収スペクトル分析法(既知および未知有機化合物の測定と解析)
薄膜法(ポリスチレン)、KBr錠剤法(けい皮酸、安息香酸)、Nujol法(けい皮酸)、溶液法(酢酸エチル、未知試料)を測定し、吸収位置から官能基を同定する。
11 核磁気共鳴スペクトル分析法(既知および未知有機化合物の測定と解析)
エチルベンゼン、酢酸エチル、けい皮酸および未知試料のNMRサンプルを作成して測定し、吸収位置と多重度から化合物の構造を同定する。
12 吸光光度分析法(鉄鋼中のマンガンの定量)
試料を酸で分解し、過ヨウ素酸ナトリウムを加えマンガンを過マンガン酸に酸化し、分光光度計で吸光度を測定しマンガンの含有率を求める。
13 原子吸光分析法(実験廃液中の重金属の定量)
実験室から排出される水を、廃液処理室から採水し、原子吸光分析装置によりクロム、鉛、カドミウムを絶対検量線法により定量する。
14 X線回折分析法
粉末X線回折法を用いて標準物質のX線回折図を測定し,JCPDSカード記載のデータと一致することを確かめる。次に,3種類の物質を含む未知試料のX線回折データからHanawalt法を用いて未知物質の同定を行う。
15 熱分析法(TG−DTA、DSC)
 硫酸銅五水和物のTG−DTAおよびDSC測定を行い,それぞれのサーモグラムを解析すると共に,分析法の違いについて学ぶ。次に結晶水の減量とその離脱に要するエネルギーから五分子の水の結合状態に関する知見を得る。
16 化学工学実験(後期)の説明、準備
後期6テーマの内容説明
17 2重管式熱交換器の総括伝熱係数の実測
最も簡単な2重管式熱交換器を用いて、熱収支について学び、各種総括伝熱係数を算出し流量との関係を調べる。
18 流量測定
円管で流体輸送する場合に各種流量測定器(オリフィス、ベンチュリー、ピトー管)について圧力損失と流量(レイノルズ数)との関係を調べる。また各種継手(エルボ、拡大、縮小)の相当長さを算出する。
19 向流多段抽出
水ー酢酸ーMIBK系において向流多段抽出を行い、実験結果と三角座標を用いた作図解法を比較し、理論段数より、段効率を求める。
20 赤外線輻射加熱実験
熱源に赤外線ランプを使用し、受熱容器に水を入れた銅製の容器を用いて、金属面および黒面の距離を変えながらの照射時間ごとの温度上昇から、距離ごとの受熱速度を求め受熱量を算出する。金属面および黒面の照射距離と受熱量の関係式を求める。
21 粒度分布測定(アンドレアセンピペット)
篩分法では測定計測できない粒子径100μm以下の粒度分布を、ストークスの式の領域での終末沈降速度を用いる範囲で実験を行っている。実際にはアンドレアセンピペットを用いて測定を行う。
22 液滴生成時の次元解析
水中に有機溶媒の液滴を生成させる実験結果を利用して、次元解析の手法を習得し、理解を深める。
23 生物工学実験の説明、準備
生物工学実験の内容説明と実験室および各種機器の使用方法のガイダンス。
24 酵母の培養
YPD液体培地を調製して滅菌し、寒天平板培地にストックしてある酵母菌を植菌し、培養する。翌日、光学顕微鏡で酵母菌の様子を観察する。微生物の基礎・応用研究等で幅広く使用されている酵母菌を用いて、生物工学実験に必要な培養・観察等の基本技術を習得する。
25 培地中のグルコース濃度の定量
出芽酵母S. cerevisiaeをYPD培地で培養し、一定時間おきに培養液をサンプリングし、グルコースオキシダーゼ法でグルコースの定量を行い、酵母菌の増殖曲線と培地中のグルコース濃度の関係を明らかにする。培養や培地中の物質の定量といった基礎技術を習得するとともに、微生物の増殖過程を考察する。
26 光合成細菌の培養
酵母抽出液培地の寒天平板培地、試験管寒天培地を作成し、光合成細菌R. rubrumを植菌し、平板培地は好気条件で、試験管培地は嫌気条件で培養を行い、それぞれを実体顕微鏡で観察する。さらに、コハク酸液体培地で嫌気条件下の液体培養を行い、光学顕微鏡で観察するし、培養や観察に関わる基本技術を習得する。
27 細菌数の測定/大腸菌の培養
普通寒天平板培地を用いて、空気の流れに乗って浮遊している細菌を落下細菌として培養し、一定時間に落下してきた細菌数を数え、コロニーの様子等を実体顕微鏡で観察する。また、DNA抽出の準備として、大腸菌をLB培地で培養し、増殖させる。培養や観察に関わる基礎技術を習得する。
28 プラスミドDNAの抽出/大腸菌の形質転換
培養で増殖させた大腸菌を用い、アルカリSDS法でプラスミドDNAの抽出を行う。また、大腸菌にプラスミドDNAを導入して形質転換(塩化カルシウム法)を起こさせ、抗生物質を添加した培地で培養し、観察する。遺伝子工学に必要な遺伝子操作の基本技術を習得する。
29 DNAの制限酵素反応、アガロースゲル電気泳動
DNA制限酵素を用いてプラスミドDNAを特定の場所で切断し、アガロースゲルの電気泳動でDNA断片を分離し、泳動パターンより制限酵素地図を作製する。制限酵素について考察するとともに、遺伝子工学で必要な遺伝子操作等の基本技術を習得する。
30 実験全体のまとめと報告
実験の総まとめと実験室の修復。


クラスを2グループに分け前期には2分野(化学工学実験、分析化学実験)を実施、後期には2分野(化学工学実験、生物工学実験)を実施。試験は実施しない。