【 2005 年度 授業概要】
科   目 生物 ( Biology )
担当教員 浅川 大地
対象学年等 応用化学科・2年・通年・必修・2単位
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
授業の概要
と方針
生物学の基礎を分子生物学的・環境生物学的視点から講義する。前期では、微生物と植物の生命活動を細胞内化学反応として解説し、それにともなう細胞外因子に対する応答反応について考える。後期では、核酸と蛋白質について核酸生化学を中心として講義する。なお、随時現代社会における生物科学の応用例、先端技術を紹介する。



1 細胞の構造と細胞内小器官の機能を理解できる。
2 生物の多様性を維持する機構とその多様性の利用法を理解できる。
3 呼吸による細胞のエネルギー獲得機構を理解できる。
4 光合成の生化学反応とそれに影響を与える外的因子の作用機構を理解できる。
5 核酸の基本構造と転写、翻訳機構を理解できる。
6 タンパク質の基本構造と生合成経路、機能を理解できる。
7 植物の環境に対する応答を理解できる。
8  
9  
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1 細胞の構造と細胞内小器官の機能が理解できているか期末試験で評価する。
2 生物の多様性を維持する機構とその多様性の利用法を理解できているか期末試験で評価する。
3 呼吸による細胞のエネルギー獲得機構を理解できているか期末試験で評価する。
4 光合成の生化学反応とそれに影響を与える外的因子の作用機構を理解できているか期末試験、および実験レポートの内容で評価する。
5 核酸の基本構造と転写、翻訳機構を理解できているか期末試験で評価する。
6 タンパク質の基本構造と生合成経路、機能を理解できているか期末試験で評価する。
7 植物の環境に対する応答を理解できているか期末試験で評価する。
8  
9  
10  




各到達目標の定期試験90%、到達目標3の実験レポート10%で評価し、60点以上(100点満点)を合格とする。ただし、出席状況の悪いものは不合格とする。
テキスト 資料プリントを随時配布する
参考書 授業で随時紹介する
関連科目  
履修上の
注意事項
 

【授業計画( 生物 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 本講義の概説と細胞構造について
本講義の目標と、受講する上での注意事項の説明を行う。生物の構成単位である細胞について概説することで、生物の定義について考える。
2 細胞構造;細胞の多様性
細胞は多様な形態と機能を持つ。分かり易い例が動物細胞と植物細胞との比較である。また、それらは相違点を持つと同時にそれ以上の共通点も併せ持つ。
3 細胞構造;細胞内小器官の機能
生物の細胞は種々の細胞内小器官から構成される。各細胞内小器官はそれぞれ重要な役割を担っている。中でも細胞膜の持つ半透性という性質は細胞のエネルギー獲得機構に不可欠な浸透圧を生み出す。
4 細胞分裂
体細胞分裂は我々の体(形態)の維持のため日常的に行われている。子孫を残すために行う減数分裂はより複雑であり、この分裂機構に生物が多様性の源がある。
5 遺伝と分化
減数分裂の機構を理解すれば、遺伝の仕組みもよく分かる。また、細胞は特定の遺伝子を活性化することで、その構造や機能を変化させる。
6 微生物;定義と機能
微生物とは顕微鏡などを用いて初めて観察できる生物のことである。微生物は非常に大きい多様性とそれに起因する多様な機能を持っている。
7 微生物;有用性と実用例
紀元前より現在に至るまでヒトの生活と微生物とは密接に結びついてきた。近年では、微生物の遺伝子資源は医療技術や環境浄化技術などに利用されている。ヒトと微生物の新たな関係ができつつあり、微生物の重要性が再認識されている。
8 中間試験
 
9 中間試験解答、嫌気呼吸と好気呼吸
細胞のエネルギー獲得機構である呼吸には嫌気呼吸と好気呼吸とがある。それらは反応系の違いによりエネルギー生産効率に大きな差がある。
10 呼吸;解糖系、クエン酸回路
呼吸の反応経路の最初に必要な解糖系はグルコースを分解する。それに続くクエン酸回路において二酸化炭素が放出される。
11 呼吸;水素伝達系
水素伝達系によって、ミトコンドリア内で水素イオンの濃度勾配が生じる。水素イオンの濃度勾配は浸透圧を生み、結果としてエネルギーを生産する。
12 光合成と環境要因
光合成とは光エネルギーを化学エネルギーに変換する生化学反応である。また、光合成は光の強さや二酸化炭素濃度、温度などの影響を強く受ける。
13 実験;光合成と光
光の強さが光合成の反応速度の律速因子となることを実験で確認する。
14 光合成;明反応と暗反応
光合成の反応は、電子の伝達とそれに伴って生じる水素イオンの濃度勾配によって説明できる。
15 光合成の種類
植物は自ら移動できないため、生き残るためには環境の変化に柔軟に対応する必要がある。その結果、生育環境に適した光合成機構を獲得してきた。
16 遺伝子;概論
遺伝子の存在は19世紀後半に示唆されていたが、その実体が発見されたのはおよそ50年前である。それ以降、遺伝子の研究は飛躍的に進歩し、今日では我々の生活向上のためにはなくてはならない技術分野へと発展している。
17 遺伝子の構造
遺伝子の実体はDNA(デオキシリボ核酸)という高分子である。遺伝子はわずか4種類の文字で我々の遺伝情報の全てを記憶している。
18 遺伝子情報の解読
遺伝子情報は塩基配列によって記録されている。酵素的手法や化学的手法によって塩基配列は決定される。最新の分析機器は塩基配列決定の高速化を実現している。
19 DNA;転写
遺伝子が発現するためには先ず、DNAが転写されてメッセンジャーRNAが合成される。メッセンジャーRNAはDNAの情報を正確に複写した構造を持つ。
20 DNA;翻訳(前半)
転写によって合成されたメッセンジャーRNAは細胞核外へと移動し、その遺伝暗号が翻訳される。翻訳時にはメッセンジャーRNAの遺伝情報をトランスファーRNAが解読する。
21 DNA;翻訳(後半)
トランスファーRNAによって適正なアミノ酸が運搬・結合され、アミノ酸の重合体であるたんぱく質を合成する。たんぱく質は遺伝情報で決められているアミノ酸の配列によってその構造と機能が決定される。
22 DNA;修復
DNAは常に危険に曝されており、遺伝情報の変異は日常的におきている。そういった日常的な変異はDNAの修復機構によって速やかに修復される。
23 中間試験
 
24 中間試験解答、遺伝子組み換え技術
組み換えDNA技術には何十億もの塩基配列の中から特定の数千〜数万の塩基配列を選択・単離・増幅する必要がある。この技術はここ十数年で飛躍的に進歩した。
25 遺伝子組み換え技術;生物の利用
ウィルスは生物とも非生物とも言い難い中間的な存在である。そのウィルスは自己増殖の為に、自らの遺伝子を宿主の遺伝子に組み込む。多くの場合、この能力を利用して遺伝子組み換えが行われる。
26 遺伝子組み換え技術;概要
ウィルスを利用した遺伝子組み換えが主流であるが、その中でも様々な技術的工夫がなされている。遺伝子組み換えの確認のためにはマーカー遺伝子の組み込みなどが行われる。
27 遺伝子組み換え技術;実例
遺伝子組み換え食品はすでに我々の身の回りではありふれたものとなっている。長持ちするトマトや耐害虫性をもつ作物は多くの利点を持つ。また、我々は遺伝子組み換えの危険性を認識した上で、利用していく必要がある。
28 植物と病原性微生物
病原性微生物の感染に対して植物は種々の抵抗性を示す。感染されて始めて誘導される抵抗性を動的抵抗性と呼び、そのシグナル伝達機構は未知の部分が大きい。
29 植物と病原性微生物;植物の自己防衛
感染された植物は自己防衛の為に細胞の自殺(アポトーシス)を行う。また、同時に感染されたという情報を隣に生えている植物に伝達しているようである。
30 アレロパシー
植物は根や葉から化学物質を放出して、他の植物の生育を阻害する場合があり、その現象をアレロパシーと呼ぶ。


・中間試験を実施する。
・定期試験を実施する。