【 2005 年度 授業概要】
科   目 高電圧工学 ( High Voltage Engineering )
担当教員 北村 洋
対象学年等 電気電子工学専攻・1年・前期・選択・2単位
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
A4-1(100%) (d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g)
授業の概要
と方針
絶縁物は過大な電圧が加えられると導体に変化する。この現象を絶縁破壊という。高電圧工学では、絶縁破壊の発生機構、絶縁破壊の防止法および高電圧の応用などについても研究するとともに、気体の絶縁破壊で生じるプラズマについても研究を行う。高電圧プラズマの応用はあらゆる分野におよび、またこの技術を活用する従来のレベルを超えた新しい研究や産業を発展させることが出来る。



1 【A4-1】  気体中の荷電粒子の発生と消滅の機構が理解できる。
2 【A4-1】  気体の部分破壊および絶縁破壊現象が理解できる。
3 【A4-1】  電界・電極の形状などが放電現象に及ぼす影響を理解できる。
4 【A4-1】  プラズマの生成過程およびその応用について理解できる。
5 【A4-1】  液体の絶縁破壊現象が理解できる。
6 【A4-1】  固体の絶縁破壊現象が理解できる。
7 【A4-1】  複合誘電体の絶縁破壊機構が理解できる。
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1 α作用、γ作用、拡散、再結合および電子付着等の機構が理解できているか、期末試験およびこれらの内容中の指定した項目についての口頭発表により評価する。
2 正負コロナ放電、火花放電、全路破壊現象等の機構がが理解できているか、期末試験およびこれらの内容中の指定した項目についての口頭発表により評価する。
3 平等電界、不平等電界、平行平板電極、針電極、同心円筒電極が放電に及ぼす影響が理解できているか、期末試験およびこれらの内容中の指定した項目についての口頭発表により評価する。
4 放電路中のプラズマの生成機構およびプラズマの化学作用の応用について理解できているか、期末試験およびこれらの内容中の指定した項目についての口頭発表により評価する。
5 液体中においても、気体中と同様に放電現象が行われるが、その発生機構が理解できているか、期末試験およびこれらの内容中の指定した項目についての口頭発表により評価する。
6 トリーイング現象等、固体内部で発生する放電現象の発生機構が理解できているか、期末試験およびこれらの内容中の指定した項目についての口頭発表により評価する。
7 複合誘電体の各部分の電界分布や、その境界面で発生する沿面放電現象の機構が理解できているか、期末試験およびこれらの内容の中の指定した項目についての口頭発表により評価する。
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到達目標1〜7の期末試験60%、各自による口頭発表30%およびレポートの内容10%で評価する。なおレポートについては、総括的なものとして、身近に生ずる放電現象あるいは放電現象の応用面について調査、報告したものを評価する。ただし、出席状況の悪い者は不合格とする場合がある。
テキスト プリント
参考書 「新版 高電圧工学」:河野 照哉 著(朝倉書店) 
「基礎 高電圧工学」:赤崎 正則 著(昭晃堂)
関連科目  
履修上の
注意事項
与えられたテーマについてのプレゼンテーションを行う場合、プリントにして全員に配布するか、あるいは板書による説明で行ってもよい。関連科目名とその関連性は、まず基礎的には、「電磁気学」の電界(平等、不平等)および誘電体の性質および、「放電現象」の部分破壊、火花放電および全路破壊について関連している。また、「静電気応用工学」および「プラズマ工学」へと繋がっていく。

【授業計画( 高電圧工学 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 高電圧現象あるいは高電界現象について
気体、液体、固体誘電体で構成された絶縁系において、ある値以上の電圧が加えられると絶縁破壊が生ずる。そして全路破壊に至る様相は各種の条件によって様々に変化する。これらの現象を総称して高電圧現象あるいは高電界現象という。
2 高電圧プラズマ工学の特徴
高電圧プラズマ工学が関係する分野は極めて広く、しかも電力の供給や照明などのように、必要不可欠のものが多い。また、新物質フラーレンの発見に見られるように、さまざまな可能性を秘めた発展性のある分野でもある。
3 気体の性質と気体中の荷電粒子の運動
絶縁破壊に影響の大きい電子の運動を中心に、2,3の基礎的な事項について調べてみる。
4 気体の絶縁破壊の前駆現象
平行平板電極間の気体に電圧を加え、次第に上昇させると、ある値で突然全路破壊が起こり発光する。それ以前には肉眼で光を見ることは出来ないが、微弱な電流が流れている。これを暗流といい、この特性について調べていく。
5 荷電粒子の発生機構および消失機構
電子の衝突電離現象(α作用)、イオンの2次電子放出作用(γ作用)による荷電粒子発生機構および拡散、再結合、電子付着等の荷電粒子消失機構について調べる。
6 ストリーマ理論
Raetherの実験結果は多くの研究者の関心を呼び、空間電荷の影響を考慮した新しい放電理論(ストリーマ理論)が発展した。この理論の提案者の1人であるJ.M.Meekによる、放電開始の機構について調べる。
7 各種の放電
バリア放電、高周波放電、電磁誘導放電等について調べる。
8 大気中の絶縁破壊現象
平等電界あるいは不平等電界中の放電現象またインパルス電圧による絶縁破壊について調べる。
9 演習
項目1〜8について、演習を行う。
10 液体の絶縁破壊
絶縁物として用いられる液体誘電体の絶縁破壊の原因とその対策について調べる。
11 固体の絶縁破壊 1
絶縁物として用いられる固体誘電体の絶縁破壊の原因とその対策について調べる。
12 固体の絶縁破壊 2
固体中で発生する部分放電について調べる。
13 沿面放電 1
複合誘電体の境界面で発生する沿面放電の発生機構について調べる。
14 沿面放電 2
沿面放電に対する対策法について調べる。
15 演習
項目10〜14について、演習を行う。


・中間試験は実施しない。
・期末試験を実施する。